2009年11月号
連載3  - 平成20年度特許出願技術動向調査について
(後編)
シリコン系の特許出願で日本が圧倒的シェア
顔写真

田内 幸治 Profile
(たうち・こうじ)

特許庁 総務部 企画調整課
技術動向班 技術動向係長


特許庁の平成20年度特許出願技術動向調査から「太陽電池」調査結果の概要を紹介する。日米欧、中国、韓国における出願状況を見ると、シリコン系は日本国籍による出願が70%を超える。有機半導体系では、日本国籍がトップだが、米国籍と欧州国籍の合計は日本国籍による出願件数を上回っている。

前回は、特許出願技術動向調査と平成20年度調査結果の概要について説明した。今回は、平成20年度調査テーマの1つである「太陽電池」の調査結果を一部抜粋して紹介する。

平成20年度特許出願技術動向調査「太陽電池」の概要
1. 調査範囲

太陽電池とは、太陽等からの光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電池であり、温室効果ガスの排出削減に向け、自然エネルギーを利用した電力源の1つとして、近年、世界各国で急速に普及している。太陽電池の主な用途は住宅用、産業用、公共用などである。なお、本調査では色素増感型太陽電池は調査対象外としている(図1)。

図1

図1 技術俯瞰(ふかん)図

2. 特許出願動向

本調査では、前述の調査範囲に基づいて、国内特許文献約8,300件、海外特許文献約6,500件、論文約7,000件を読み込み、調査・分析を行っている。

日本、米国、欧州、中国、韓国における出願件数収支を見ると、日本、米国、中国への出願件数において、日本国籍が最も高いシェアを有している。また、日本国籍、欧州国籍、米国籍はいずれも韓国よりも中国へ多く出願している(図2)。

図2

図2 日米欧中韓における出願件数収支(2000—2006年の出願)


図3

図3 太陽電池の種類別の出願件数シェア(日米
     欧中韓への出願、2000—2006年の出願)

太陽電池の種類別の出願動向を見ると、結晶シリコン型、薄膜シリコン型といったシリコン系は、日本国籍による出願が70%以上と圧倒的に高いシェアとなっている。有機半導体系では、日本国籍の出願件数がトップであるものの、日本国籍に続く米国籍と欧州国籍による出願件数の合計は、日本国籍による出願件数を上回っている(図3)。

3. 研究開発動向

表1 太陽電池の種類別の論文件数(国際主要論
     文誌(25誌)、発行年:2000—2007年)

表1

太陽電池の種類別の論文件数を研究者所属機関国籍別に見ると、欧州国籍による論文件数が最も多く、次いで米国籍、日本国籍と続く。太陽電池の種類別では、日本国籍についてはシリコン系および化合物薄膜についての論文件数が多く、有機半導体系は少ない(表1)。

4. まとめ

本調査では、本稿で紹介した動向調査以外に、政策動向や市場動向についても調査を行っている。そして、各動向調査を総合的に分析し、今後わが国が取り組むべき課題と方向性を整理して提言として取りまとめている。以下、太陽電池における提言を3つ紹介する。

結晶シリコン型、薄膜シリコン型の技術開発では、海外に対して優位性を確保しており、今後も引き続き世界をリードしていくことが期待される。
化合物薄膜系においては、研究成果を論文発表のみならず、特許出願にも注力していくことが期待される。
世界を視野に入れ、より戦略的、かつ、バランスの取れた形で海外へ特許出願することが望まれる。

おわりに

特許出願技術動向調査について、平成20年度実施テーマ「太陽電池」を例にその概要を説明してきたが、上記以外にも、より詳細な技術区分別出願動向等の分析も行っている。興味のあるテーマについて、ぜひご一読*1いただければ幸いである。

わが国の企業や研究開発機関等が、特許出願技術動向調査を有効に活用することにより、効率的な技術開発が進み、結果として、わが国の国際競争力強化につながれば幸甚である。

*1
調査結果の要約版は、特許庁ウェブサイトで公開している(http://www.jpo.go.jp/shiryou/gidou-houkoku.htm)。報告書については、国立国会図書館、各経済産業局特許室及び沖縄総合事務局特許室、各都道府県の知的所有権センター、特許庁図書館にて閲覧可能である。