2009年12月号
特集2  - 酒造りで醸成する連携のこころ
石狩の特産目指すピンクの発泡酒 女子大生が味、色、名前からストーリーまで
顔写真

池田 隆幸 Profile
(いけだ・たかゆき)

藤女子大学 人間生活学部
食物栄養学科 教授


北海道石狩市に産学官連携で造られたピンクの発泡酒がある。同市にキャンパスのある藤女子大学人間生活学部の4年生がその商品設計を行った。ヒントになったのは特産のシソジュースだ。

4年生がビール、地域の勉強から

石狩鍋発祥の地、北海道石狩市は札幌市の北西隣に位置する。男性的なイメージの石狩市だが、そこにある唯一の大学が、藤女子大学人間生活学部の花川キャンパスである。そのカトリック系女子大と市内の地ビール会社、株式会社日本地麦酒工房が「ピンクの発泡酒開発コラボレーション」を始めたのが2006年4月だった。華やかな石狩市へのイメージチェンジ、特産品づくりが狙いである。同市がその橋渡しや側面からの支援を行う産学官連携のプロジェクトだ。発泡酒の味や色から、ボトル、ラベル、ネーミングまで食物栄養学科4年生の感性に委ねられた。

学生のほとんどが札幌市から通っているため石狩市のことはあまり知らない。まずは、探検から始まった。日本地麦酒工房でビールの勉強をしたり、観光協会、市役所などを訪れて特産物を調べたりした。そこで浮かび上がってきたのが特産物のシソジュース。ピンクの色は決まった。試行錯誤の発泡酒づくりは、4回の試飲会を経て、色、味、風味などの絞り込みを行い、秋の学校祭では一般試飲会によるアンケートも行った。

ラベルデザインと名前

女性は、飲むのもおしゃれの1つ。ならば、ラベルやネーミングも大切な要素である。キーワードは「幸せ」。学生たちの意見で最終的に出来上がったのは、黒いラベルにピンクのハート4つでかたどられた四つ葉のクローバーだった。名前も、500種類以上の候補の中からCana Storyに決まった。Canaとはキリストが婚礼に招かれ最初に起こした奇跡の土地の名前、「幸せ」への彼女たちの思いが詰まっている。

販売促進プラン
写真 ピンクの発泡酒「Cana Story」

ピンクの発泡酒「Cana Story」

商品にはストーリーが大切である。“女子大生がつくった” にプラスして、もう1つ何かないだろうか? それを探していた2006年7月、石狩市厚田公園展望台が「恋人の聖地」として北海道で最初に認定された。この場所で、最終試飲会、最終会議を行い、味、色、ラベル、ネーミングを決め、初仕込みも学生が手伝った。これで「女子大生が考え育て、恋人の聖地で生まれたピンクの発泡酒」のストーリーが出来上がった。

もちろん、製造、販売は日本地麦酒工房で、2006年12月の販売直後は、異常なほどの人気で、翌年3月までの予定販売数を2週間で達成した。現在はブームも落ち着き、特別な日のお酒として、石狩市内の酒屋、札幌駅と千歳空港のお土産物屋で手に入れることができる。