2009年12月号
編集後記

産学の人材育成関係の会議に出ると、人材関係の統計データの不足がしばしば指摘される。人材関係は大学のデータと企業の採用データの両方が必要となり、その接続が重要である。しかし、こういう統計データを取るのは、地味で手間暇が予想以上にかかる仕事であり、多くの人の協力が必要である。大規模にやろうとすれば、相当な予算がいる。

日本は“もの” にはお金を払うが“情報” はタダだと思うフシがある。苦労して集めたデータも、利用する人はあまり有り難みを感じない。

国の統計データは強力であるが、それでカバーできないところは、学会、大学、企業が協力して、継続してデータを取り続ける努力が必要と痛感する。

(編集委員・府川 伊三郎)

産官学連携の目的の1つは、基礎研究の成果を現実の技術や商品へと結実させ、新たな産業を創出することである。では、科学技術創造立国の旗の下、多くの基礎研究がなされているにもかかわらず、なぜ実用化された例がそれほど多くないのか。商品化には、工場での生産体制も含めて、開発研究がいかに大切であるかは言うまでもない。つまり「基礎→応用」ではなく「基礎⇔開発⇔応用」が現実なのだが、この「開発研究」の重要性がどれだけ認識されているだろうか。いろいろ取材して、いまこそ本格的な開発研究(実証化研究)を、実のある形で展開支援するプラン・機関・資金が必要だと感じる。それなくしては、鳩山首相のCO2の25%削減も難しいと思う。

(編集委員・松尾 義之)

車に関心を示さない若者、広がるカーシェアリング、国内生産の一段の縮小——自動車に関する最近のニュースは、1つの時代が終焉(しゅうえん)を迎えたことを示している。新興国の中産階級をターゲットにした超低価格車が話題になっているが、日本のメーカーもこの分野に力を入れ始めた。ボリュームゾーン戦略だ。機能的にはローエンド品だが、数を売ること、シェアを握ることが企業経営を左右することを、今更のように学んでいるようにも見える。ハイブリッド車に強いメーカーと、電気自動車の時代に早く移行させようとしているメーカーのせめぎ合いも激しい。いずれも、メーカーのビジネスモデルの問題に行き着くが、わが国メーカーの競争力、収益力が、巡り巡って大学・研究機関を含めたこの分野の研究開発動向にも影響することになる。

(編集長・登坂 和洋)