2010年1月号
巻頭言
顔写真

小宮山 宏 Profile
(こみやま・ひろし)

株式会社三菱総合研究所 理事長
独立行政法人 科学技術振興機構
低炭素社会戦略センター長


「プラチナ構想ネットワーク」の推進

鳩山首相は国連気候変動首脳級会合で、2020 年までに日本の温暖化ガスの排出を1990 年比で25%削減すると表明した。このことがもたらす結果に一部に危惧(きぐ)の念も寄せられているが、要はやり方次第なのである。私は、輝かしい日本を実現する格好の目標たりうると考えるので、そのための提案を行いたい。

日本のエネルギー消費は、家庭、オフィス、輸送の「日々のくらし」が55%、素材、自動車、家電など「ものづくり」が45%を占める。「日々のくらし」で80%削減、これはわが家をエコハウスにすることですでに実証済みである。すなわち日本全体で44%削減が可能であり、2020 年までの進行率を4 分の1 として11%の削減を目指す。すでにエネルギー効率の高い「ものづくり」に過度の負担を求めるのは得策でない。5%と想定する。原子力発電の稼働率を国際レベルまで高め、これに風力発電などを合わせて4%。森林保全による吸収源拡大、海外での省エネや新エネ投資などで5%。こうすれば、排出権購入によらず、25%削減の自力達成が可能である。「日々のくらし」での大きな削減は、省エネ、創エネの先端機器やサービスの購入を意味し、それが「ものづくり」のマーケットを育て、雇用を創出し、21 世紀の世界が必要とする新産業を日本から生み出すことを可能にする。今こそ、前向き志向が必要なのである。

日本は課題先進国であり、温暖化のみならず多くの困難を抱えている。これらを同時に解決するために、所得倍増計画、日本列島改造論に代わる新たな国づくりの方向性を示すビジョンをつくる必要がある。しかも、それは、政府が産業を興し国民の暮らしを良くするという従来のものではなく、地域で暮らしを良くすることで新たな産業を興すという先進国型モデルでなければならない。私は、このように地域ごとに快適な暮らしを実現しようとする社会をプラチナ社会と呼んでいる。プラチナとは次世代のキーワードである高齢者、生態系、低炭素の3 つの輝きを表している。

これを実現するために、全国の自治体と協働でまちづくりの実験を行うのが、「プラチナ構想ネットワーク」である。エコでバリアフリー、新たな雇用と新産業で快適なまちづくりを目指すのである。

市民が協力し合える風土の力と、太陽電池、燃料電池、蓄電池、ヒートポンプ、エコカー、エコ家電、断熱材といった日本が得意とするものづくりの力を結集する「プラチナ構想ネットワーク」の推進が、温暖化、高齢化などに直面する日本を真の先進国とするのだ。