2010年3月号
特集  - 環境都市 5つのアプローチ
コンパクトシティ戦略
富山市 公共交通を軸とした拠点集中型の
まちづくり

岡崎 拓郎  Profile
(おかざき・たくろう)

富山市 都市整備部
都市政策課 企画係 技師

富山市のCO2 排出量の増加率は全国平均を上回っている。過度の自動車依存や平坦な地形のため市街地が拡大し、インフラを維持するための環境負荷が増大しているからだ。そこで同市は鉄軌道などの公共交通を活性化させ、その沿線に都市機能を集中させるコンパクトなまちづくりを目指している。

はじめに

富山市では、過度に自動車に依存している交通体系や平坦な地形等を背景に、市街地面積の拡大と低密度化が進行し、インフラの維持等の都市運営コストや環境負荷の増大等が懸念されている。

温室効果ガスの95%以上を占めるCO2排出量を見てみると、富山市においては1990 年から2005 年までに約15.7%増加しており、全国平均を上回っている。部門別では、産業部門において減少しているが、家庭部門、業務・その他部門、運輸部門において大幅に増加しており、家庭やオフィスでの省エネ等の対策はもちろんのこと、運輸部門におけるCO2の削減が大きな課題となっている。

このような中、平成21 年3 月に策定した「富山市環境モデル都市行動計画」ではCO2排出量を基準年2005 年比で、2030 年に30%、2050年に50%削減するという、削減目標を掲げている。

富山市のまちづくりの理念
図1 「お団子と串の都市構想」概念図

図1 「お団子と串の都市構想」概念図

「富山市都市マスタープラン」では、富山市のまちづくりの理念として「鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集積させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」を掲げ、便利な公共交通を串(くし)、地域拠点を団子に見立て、「お団子と串の都市構造」を目指すこととしている(図1)。

具体的には市内の鉄軌道6 路線、幹線バス24 路線を「公共交通軸」に設定し、利便性の向上を図りつつ、公共交通軸の沿線に人口・都市機能を誘導することで、富山市民のうち公共交通が便利な地域に住んでいる市民の割合を、現在の約3 割から20 年後には約4 割に引き上げることを目標としている。

富山市のCO2削減の基本方針

富山市では「コンパクトなまちづくり」を推進することで、交通モードの転換と移動距離の短縮、さらには住み替えに伴い住宅の省エネ性能の向上を図ることなどにより、CO2排出量の大幅な削減を図ることとしており、「富山市環境モデル都市行動計画」では、中期の取り組み方針として以下の4 つを掲げている。

1. 公共交通の活性化の推進

公共交通の利便性の向上を図るなど公共交通の魅力を高めることにより、公共交通の利用促進を図る。

2. 中心市街地や公共交通沿線への機能集積の推進

中心市街地や公共交通沿線での居住に対して支援しながら、居住、商業等の都市機能の集積を推進する。

3. コンパクトなまちづくりと一体となったエコライフの推進

郊外の戸建住宅からまちなか、公共交通沿線の集合住宅への住み替え促進や郊外の戸建住宅においても住宅の更新に合わせた省エネ性能の向上を図るなど、環境負荷の少ないライフスタイルへの転換を推進する。

4. コンパクトなまちづくりと一体となったエコ企業活動の推進
写真1 富山ライトレール

写真1 富山ライトレール

再開発など中心市街地の活性化とあわせた業務建築物の省エネ性能の向上のほか、企業の自動車利用の見直し、就業空間、生産活動の低炭素化により、環境負荷の少ないワークスタイルや生産活動への転換を促進する。

公共交通活性化の推進によるCO2削減への取り組み
写真2 市内電車環状線「セントラム」

写真2 市内電車環状線「セントラム」



図2  LRTネットワーク構想

図2  LRTネットワーク構想

4 つの取り組み方針のうち富山市の中心的な施策となっているのが公共交通の活性化である。

平成18年4月、富山市が鉄軌道活性化のリーディングプロジェクトとして取り組んだ「富山ライトレール」が開業した(写真1)。かつてのJR富山港線のルートを活用したものだ。利用者数はJR時代の約2.1倍(平日)となり、運行する富山ライトレール株式会社は3年連続の黒字である。また、平成21年12月には市内電車環状線「セントラム」(写真2)が開業し、予想を上回る数の乗客を乗せて順調なスタートを切った。

将来的には、富山駅の高架化にあわせた南北路面電車一体化や富山地方鉄道上滝線への市内電車の乗り入れなど、総延長約25km に及ぶ「LRT ネットワーク」を形成する構想があり(図2)、この実現に向け関係機関などと調整を図りながら取り組んでいくこととしている。

おわりに

富山市では「公共交通を軸にしたコンパクトなまちづくり」を進めながら、低炭素型の都市を実現することとしているが、今後本格的にコンパクトなまちづくりを実現していくためには、行政主導の取り組みだけでなく、市民や企業なども参加した“オール富山市” による取り組み体制づくりが必要不可欠であると考えている。