2010年3月号
連載2  - 小企業と大学の連携
(下)
日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業支援と大学
顔写真

飯島 茂春 Profile
(いいじま・しげはる)

株式会社日本政策金融公庫
国民生活事業本部 創業支援部
専門審議役

2010年1月号の連載第1回では、日本政策金融公庫総合研究所の調査結果から、小企業と大学の連携が内容、業種ともに非常に多岐にわたっていること、第2回では、同調査をもとに大学との連携によって小企業が得ている効果を確認した上で、産学連携推進に向けた課題とその解決の方向性について考察した。最終回の今回は、日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業支援と大学について、当事業の概要、ビジネスプランの評価のポイントに触れ、産学連携支援策等を紹介する。

日本政策金融公庫(国民生活事業)の概要

株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)は平成20 年10 月、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)が統合して発足した。国民生活事業は小規模企業の皆さまへの事業資金融資(創業資金融資を含む)やお子さまの入学資金などを必要としている皆さまへの教育資金融資などを行っている。

【国民生活事業の概要】
  ● 事業資金の融資先数は113 万企業にのぼり、当事業の1企業当たりの平均融資残高は575 万円と小口融資が主体。小企業は、日本の企業数の87%を占めている。融資先は生活密着型事業から最先端事業まで幅広い。生活に密接なかかわりを持った食料品店、美容室や工務店などがある一方、バイオやIT など最先端の知識や技術を持った事業もある。
  ● 小企業の約9 割が従業員9 人以下であり、個人・法人別でも個人企業が約半数を占めている。無担保融資の割合は全体の8 割(件数)となっており、無担保・無保証人の融資の割合は全体の3 割(件数)を超えている。

創業前の方や創業後間もない方は、営業実績が乏しいなどの理由で民間金融機関から融資を受けることが困難な場合が少なくない。これに対応するのが日本公庫(国民生活事業)の創業支援の取り組みである。平成20年度において「創業前および創業後1 年以内」の企業への融資実績は2万141企業、「創業前および創業後5 年以内」の企業への融資実績は4 万8,141企業となっている。創業時点での平均従業者数は日本公庫「新規開業実態調査」によれば、4.1 人となっているので、結果として約8万人の雇用創出が図られたことになる。

ビジネスプランの作成の目的

創業を考えている方にとって「どのようなビジネスプランを策定したらよいか」や「金融機関はビジネスプランのどういう点を重要に考えているか」などは関心の高いところだ。

ビジネスプラン作成の目的は2つある。

1. 他人(出資者、金融機関、取引先等)のため

これから起こす事業・ビジネスを視覚的に「出資者、金融機関、取引先など自分以外の第三者」に理解してもらう。

2. 自分のため

自分が考える事業構想を体系的に整理し、その事業が、[1]やりたいこと(困難を乗り越えていける熱意・信念・志があるか) [2]できること(必要なスキルが身に付いているか)[3]社会が求めていること(ビジネスとして成り立つだけのニーズがあるか)、の3 点がそろっているかを検証し、事業化するための課題と「やるべきこと」を明確にすること。また、このビジネスプランは事業をスタートした後の「羅針盤」にもなる。当事業が実施した「新規開業実態調査」によると、創業時に計画した売り上げを達成した企業は約4 割しかない。ビジネスプランはこのような企業が事業の方向性を修正するのに役に立つ。

ビジネスプランの評価のポイント

創業企業は取引実績・信用情報がないため、金融機関は創業企業の「経営者としての能力」および「的確なビジネスプラン」の2 点に評価のポイントを置いている。「経営者としての能力」がなければ「的確なビジネスプラン」を作成できないことから、ビジネスプランは「経営者としての能力」を測る1 つの材料と言えるだろう。

具体的に金融機関が創業企業のビジネスプランを評価する際のポイントは以下の4 つである。

1. 事業内容

新たに市場に参入し事業を維持していくためには、既存企業と差別化できる特性(商品特性、技術力)を把握、差別化できる特性は何か(商品・サービス・技術・価格・販売方法・立地・営業時間など)をとらえ、それらが市場において求められているものか、既存企業との競争に耐えうるものかを検討する。

2. 準備度合い

準備の度合いが創業後の業績を左右すると言っても過言ではない。準備状況のポイントは、主に情報収集、弱点の理解と克服、従業員の確保、家族のサポートの4 つが挙げられる。

3. 創業時の資金計画

創業者は立派な設備で大きな事業を行いたいと考えがちだ。そうなると、当然に高額な資金が必要であり、借入依存度が高くなることからリスクが高まる。しかし、ここで大事なのは「小さく生んで大きく育てる」という発想である。なるべく設備投資は少額に抑え、万一の事態にも対応できるだけの余裕を持った資金計画を立てることによって事業の成功確率を高めることが重要だ。

4. 収支計画

で収支を大幅プラスにしてしまう傾向がある。収支が大幅プラスだから融資を受けられるというものではない。大幅プラスということを金融機関に納得させなければならない。反対に非常に堅めの収支予測を行って、当初は大幅な赤字となった場合には、黒字化するまでの資金繰りはどうするのか、黒字化のためにどのような取り組みを行うのか、その時期はいつかということを金融機関に納得させる必要がある。そのため、創業者は専門家などの第三者の意見、飲食店であれば人通りなどの立地調査などの情報収集により、自分の収支予測が客観的に見て適正かどうかを検証していくことが必要だ。

以上のビジネスプラン評価のポイントは、大学発ベンチャーにおいても参考になるところが多いと思われる。当事業ではビジネスプランを策定し、これから事業を始めようとする方、あるいは、始めておおむね5 年以内の方に対して、いくつかの融資制度等を設けて支援している*1

産学連携における中小企業基盤整備機構との連携

当事業は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が支援する大学発ベンチャー企業に対する資金調達をサポートしている。中小機構は、当事業の取引先等で技術相談等を希望する企業に対し、大学等の研究機関を紹介していただくという連携を行っている(図1)。

図1 中小機構との連携スキーム図

図1 中小機構との連携スキーム図

このほか産学連携の支援策として、大学等での講義(起業家教育)を実施している。毎年2 万企業余りの創業をお手伝いしているが、地域活性化の担い手である創業企業への融資の実態などについて、「支店現場」での経験を学生の皆さんにお届けしている。

平成21 年度第2 次補正予算関連の制度改正により、「設備資金貸付利率特例制度(設備資金の当初2 年間の貸付利率を0.5%低減するもの)」を創設した。新規開業資金、女性、若者/シニア起業家資金などはこの特例制度が適用できる。

小企業が限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)の中で、市場において競争力を高め、存在感を発揮していくには、産学連携メニューは有効な対策の1 つである。小企業と大学の連携を実効あるものにするためには、双方のニーズを的確にとらえ、ファシリテーターとなる仲介機関の役割が今後高まってくると思われる。

当事業では、引き続き、地域の小企業の技術に対するニーズと、大学のシーズを結び付け、事業計画の実用化に向けた研究開発に必要な資金等の融資、金融・情報提供などの分野から支援することで、地域経済の活性化、発展に貢献していきたいと思っている。

*1
日本政策金融公庫の融資制度
URL:http://www.k.jfc.go.jp/yuushi/indexb.html