2010年3月号
編集後記

海外のサイエンスパークを幾つか見てきた。欧米では、イノベーションを創造するという明確な目的の下に、産と学が強いスクラムを組んでいる。中国では、台湾も中国大陸も様相は類似していて、国の産業の発展に応じて、いわば、かつてわが国が展開していたような、地域の工業地帯にアカデミアを融合する形で産業集積とイノベーションを実現している。いずれにも共通しているのは、官がその環境を整備するという意味で大きな役割を演じていることとそれが国の富に直結していることだ。

残念ながら、日本には確たるサイエンスパークが見当たらない。産学官が真に必要とする形態を再構築しない限り、いつまでたっても「ままごと遊びの・・・」と言われても反論できないのだが。

(編集委員・平尾 敏)

新成長戦略の下、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションが注目されている。しかし、こうした「課題解決型」の取り組みには出口に近い研究開発のイメージが付きまとい基礎研究者に敬遠されがちだ。クリーンエネルギー開発に注力している米国でこの点を質問されたスティーブン・チューDOE(米国エネルギー省)長官は「課題解決型の研究は、新たな学問のフロンティアを切り拓き、若い優秀な研究者も挑戦してくる」と自信たっぷりに答えたという。背景は、DOEが10年近く続けてきた「基礎研究ニーズ」ワークショップだ。政策担当者と研究者が課題解決への方向性を共有して基礎研究課題と戦略を探る。成果だけでなく仕込み段階からのこうした地道な取り組みにも着目することが重要だ。

(編集委員・渡邊 康正)

エアバス・ジャパン社長のグレン・S・フクシマ氏が雑誌で、米ハーバード大学の留学生の出身国トップ10のうち、9カ国は10 年前より留学生数が増え、日本だけが減少していることを紹介している。氏は、日本の若者たちが海外への関心を失っていること、米国の名門大学への日本人志望者の競争力低下などを指摘する。同大学に限らない。日本人学生の海外留学者総数は増えているものの、米国留学は1997年をピークに急激に減り続けている。活気あふれる国という米国のイメージに尻込みしているとの見方もあるが、そうなのだろうか。もう米国がモデルでなくなってきている面もあるのではないか。産学官連携の多くのテーマは米国方式を移入し取り組んできたが、見直しムードも出ているように感じる。並行して欧州の情報が増えてきた。

(編集長・登坂 和洋)