2010年5月号
特集  - 高専 新時代
発見!
国立高専の産学連携・地域連携活動の新展開
顔写真

五十嵐 一男 Profile
(いがらし・かずお)

独立行政法人 国立高等専門学校機構理事
(高専−技科大連合・スーパー地域産学官連携本部 本部長)

全国に51ある国立高等専門学校は、教育研究に次ぐ第2の使命として、それぞれの地元の企業、「地域」との連携活動に積極的に取り組んでいる。国立高等専門学校機構という1つの法人になって7年目を迎え、宮城・富山・香川・熊本の4地区には新しいモデルの高専も誕生している。高専の産学連携の新展開を追った。

国立高等専門学校機構(高専機構)*1は、当初55(2009 年10 月から51)の国立高等専門学校(高専)を1 つの法人として発足して7 年目に入りました。昨年10 月には、魅力ある高専づくりの大きな成果として4 地区(宮城・富山・香川・熊本)で新しいモデルの4 高専が誕生しました。51 高専(55キャンパス)体制のもと産学連携・地域連携活動は教育研究に次ぐ第2 の基本使命として位置付けられ、文部科学省のサポートプログラムなどの支援も受けて「高専−技科大連合・スーパー地域産学官連携事業本部」をスタートさせるなど大きくパワーアップしました。

イノベーション時代に期待される高専人材育成の役割

持続的なイノベーション創出には、日本の生命線であるものづくり技術力を担う人材を地域に輩出でき、同時に地域の中小企業等との連携に積極的に取り組む「高専」の役割が高いと言えます。しかも、高専はほぼ全国にあり、地域に根差した高専教育を目指して個性化、高度化対応などの改革に取り組んでいます。

1. 共同教育(COOP)

【事例】

  • IT 共同教育プロジェクト 退職企業技術者活用事業
  • 起業家・事業家・アントレプレナーシップ育成事業(図1



図1 アントレプレナーシップ教育

  • 頑張るICT 高専学生応援プログラム

2. 地域における技術者・社会人ものづくり人材育成

【事例】

  • 高専を活用した中小企業人材育成事業
  • 地域再生・人材育成拠点の形成事業
  • 社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業
  • 組み込みシステム開発技術者育成事業(自律型)

3. 地域貢献(街づくり・地域おこし)

【事例】

  • 「さばえめがねWAKUWAKU コンテスト」(福井高専)
  • イカの街函館「イカロボット開発」(函館高専)
  • 三豊市地域活性化事業「お茶サービスロボット」(香川高専)

特徴ある高専産学官連携活動−学学連携、広域連携を強化

地域共同テクノセンター等を拠点として、地域ニーズ対応型の共同研究を推進し、国際的技術競争力を持つ企業の創出を目指しています。高専の特徴は、常に実践的かつ創造的技術者教育(共同教育など)に還元していくことです。

1. 地域(中小企業)と高専の特徴を生かした共同研究

敷居が低い、対応が早いなどの高専の特徴と、経営者の意志決定が早い等地域企業の特徴を生かして、地方自治体の助成が得られれば新製品の開発にスピーディーにつながります。

2. 高専の技術力、人材育成力、人的ネットワーク力

高専教員の技術力は、ユニークでオンリーワンが多く、宇宙溶接技術、エアードリル技術など世界で光を放つ高専発の技術もあります。炭素繊維水質浄化技術、マイクロバブル技術や食品関連技術など地域産業の再生に貢献する技術もあります。今後の課題として、大型ファンドを獲得して事業化・実用化を目指していきます。

また、全国55 カ所に「地の拠点」を持つ規模的スケールメリット= 51 高専教員数:約3,800 名(技術系博士取得率約80%)、共同研究約600件や特許出願100 件以上(図2)=を生かした取り組みがスタートしています。



図2 共同研究(左)および受託研究(右)の推移

3. 寄付研究部門(寄付講座)の設立など企業の応援大

阿南高専では、平成19 年度より青色LED(青色発光ダイオード)で有名な日亜化学工業株式会社から高専第1 号となる寄付研究部門を設立しました。以後長野高専、仙台高専と続いています。応援してくれる企業の期待の大きさを実感しています。

4. 知的財産の活用

高専が持つ知的財産を積極的に社会に還元し(図3、4)、持続可能な社会の構築と人類の福祉の向上に寄与します(図5)。



図3 知的財産の推移



図4 他機関と比べた出願件数

全国版: イノベーション・ジャパン−大学見本市、産学官連携推進会議等
(高専主催)全国高専テクノフォーラム、高専機構/長岡・豊橋技科大先進技術説明会
地区版: JST イノベーションプラザ・サテライト、経済産業局等主催イベント
(高専主催)地区拠点校主催イベント(中国地区テクノマーケット等)


図5 知的財産教育

地元版: 地方自治体、金融機関主催イベント
(高専主催)高専技術振興会イベント
ウェブ上: J − STORE、野村イノベーションクラブ、特許流通データベース等

5. 地域での大学や自治体、銀行、商工会等との連携

高専は専攻科(研究棟)と地域共同テクノセンターを整備し、地元中小企業を中心とする技術振興会(会員50 〜200社)を組織して地域に密着した活動を展開しています。さらには例えば東北地域の高専間で交流を図るなどの広域連携も強化しています。

「高専−技科大連合・スーパー地域産学官連携本部」と「8地区広域連携拠点校制度」のスタート

高専と長岡・豊橋技術科学大学(技科大)の連合による「スーパー地域産学官連携本部」を司令塔に、高専の「地域共同テクノセンター」等を窓口にした「2 技科大と51 高専の技術のワンストップサービス」を産業界へ提供することにより、「地域イノベーションの全国展開」を目指していま す。




写真1 イノベーション・ジャパン2009

このうち、高専機構では、51 高専の人材育成力と技術力を活用し、技科大との産学官連携面での連携(共同研究等による「技術のつながり」)と内部専任人材の育成・拠点的配置による全国規模の「地域イノベーション創出サイクル」の構築が実現する体制を整備していきます。

各種産学官連携イベントへの参加

高専は、「全国高専テクノフォーラム」「高専機構/ 長岡・豊橋技科大 先進技術説明会」等の技術シーズ・ニーズのマッチングイベントを開催するほか、内閣府、文部科学省、JST 等の主催する「産学官連携推進会議」「イノベーション・ジャパン」「産学官ビジネスフェア」「アグリビジネス創出フェア」等に参加し周知に努めています。


<イノベーション・ジャパン2009>

高専からは、環境、アグリ・バイオ、医療・健康、材料、ものづくり、IT、知財本部の分野で全18 ブースを出展しました(写真1)。

<セミコン・ジャパン2009−The高専@SEMICON>


写真2  セミコン・ジャパン2009
−The高専@SEMICON

世界最大規模の半導体業界の展示会である「セミコン・ジャパン2009」において、東京エレクトロン株式会社、大日本スクリーン製造株式会社、株式会社荏原製作所の半導体製造メーカー3 社の支援により、松江高専、高知高専、熊本高専、苫小牧高専の「The高専@ SEMICON」ブースが出展されました(写真2)。