2010年6月号
単発記事
中小企業と専門学校の産学連携
-大阪産業創造館がマッチング-
顔写真

竹内 心作 Profile
(たけうち・しんさく)

財団法人大阪市都市型産業振興センター
大阪産業創造館 経営革新支援プロジェクト プランナー

専門学校は、産学連携の主体となることが少なかったが、大阪産業創造館は仲介役として専門学校と中小企業の連携を進めている。学校のシーズを企業で事業化する連携と同時に、学校のニーズと企業のシーズを結び付けるという、双方向のベクトルで取り組んでいる。

可能性有する連携主体

産学連携の主体は大学や研究機関に限ったことではない。「学」の世界に は現場力、実践力を養い各分野のスペシャリストを育成する専門学校とい うプレーヤーが存在する。少子化や大学の専門化といった厳しい要因があ り学校間の競争は激しいが、専門分野での技術・知見、即戦力となる人材 の養成、学校間のパイプでは、ほかの教育機関にも劣らないポテンシャル を有している。

専門学校がこの高い潜在能力を持っていながら、産学連携の主体となる ことが少なく、とりわけ中小企業と相互に連携するという取り組み事例が わずかだったのには、次のような理由が考えられる。連携にかかる資金の 不足、専任担当者を置いていないこと、長期的な連携ビジョンが確立され ていないことなどである。そして最も大きな要因として「連携して新しい ものを創造する」という動き出しがそもそも緩慢であったということが言 えよう。

産学連携の好循環へ

大阪産業創造館*1は、上記のような阻害要因を取り除き、企業と結び付けることが新しい産学連携の分野を生むと考え、仲介役として大阪府下専門学校と中小企業のマッチング事業に着手した(表1、写真1)。



表1 専門学校と中小企業マッチング事業の概要




写真1 専門学校と中小企業のマッチング風景

本事業の特徴は、「学」の研究シーズを企業で事業化するという一方向のベクトルではなく、上述と同時に「学」のニーズと企業側のシーズ(各社のサービス、商材、システム等)を「ビジネス提案」という形で結び付け、双方向のベクトルにアレンジしたことである。これにより両者のニーズとシーズが効率的に活用され、お互いの強みが有機的に結び付いた補完関係を構築することが可能になった。

具体的には、ある専門学校が有するシーズ「栄養の分野で学んだ学生たちとの新メニュー開発」に対しては、多店舗展開する飲食店がオファーを出した。一方、専門学校の抱えるニーズである「卒業生とのつながりを維持できるアイデア」に対しては、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をシステム構築できる企業が名乗りを上げた。

また事業を実施していく中で中小企業、専門学校ともに「連携したかったが、方法が分からなかった」という潜在的なニーズが存在していたことにも気付かされた。

専門学校ならではの成果事例


表2 参加専門学校一覧

本事業には福祉、デザイン、調理、建築などそれぞれ専門分野の異なる10 校が参加した(表2)。中小企業の側からすると連携できるフィールドが広く、成果事例に関してもさまざまな領域から報告がなされた。

専門学校のシーズを活用するパターンとしては、シャンプーなどの容器製造会社がバンタンデザイン研究所大阪本校と若者向けデザインの容器を共同で開発を開始した事例、ネイルアート用の粉粒体販売会社が大阪デザイナー専門学校と新しい画材の研究を進める事例などが出てきている。

また専門学校のニーズを満たすパターンでは、学校がオープンキャンパスで配布するノベルティーを、交流を通じて知った雑貨製造会社から導入した事例、卒業後独立開業する学生向けの財務講座をコンサルティング会社が受け持つなどの事例が挙がっている。

専門学校との産学連携は、事業化までのスピードが速いことが特徴である。今後さらなる成果の確認が期待できる。

今後の展開

専門学校を取り巻く環境は、変化のただ中にある。今後は高校生へのアプローチに加え、社会人や留学生をより意識した展開が必要になる。また出口としての就職、キャリア形成の支援にも注力しなければならない。

今回、専門学校を主体とした産学連携事業に取り組み、潜在的なニーズ、可能性の掘り起こしには寄与できたように思うが、連携主体の変化に応じてプログラムも変化し続ける必要がある。

このスキームが中小企業の支援機関や団体などによって活用、ブラッシュアップされ、産学連携の輪が大きく広がることを願っている。

*1 :大阪産業創造館
http://www.sansokan.jp/