2010年7月号
連載1  - 学生の力を活用した地域の国際化と活性化
前編
小中学校の「総合学習」で活動広がる
顔写真

村田 陽一 Profile
(むらた・よういち)

立命館アジア太平洋大学 事務局次長



大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学は、世界98カ国・地域から集まる2,921名の外国人留学生が、全学の約47%を占めている。同市の人口約12万人に占める比率 も、ほかの自治体に比べると高い。学校法人立命館、同市、そして大分県の公私3者に より設立された経緯もあり、地域国際化への寄与という使命がある。小中学校、そして 高等学校の「総合的な学習の時間」の主要なテーマの1つが「国際理解」であり、これに 応える形で、地域との交流が活発になっている。

大学の概要と設立の経緯

立命館アジア太平洋大学(APU)は2000年4月に、大分県、別府市、学校法 人立命館の三者の公私協力により大分県別府市十文字原に設立された。2010 年6月現在、世界98カ国・地域から2,921名の外国人留学生、日本国内各地 から3,310名の合わせて約6,200名の学生が学ぶ中規模私立大学である。大学 の基本理念は、「自由・平和・ヒューマニズム」「国際相互理解」「アジア太平洋 の未来創造」の追究であり、これを実現するために世界中から学生が集い、共 に学び合う多文化キャンパスをつくり上げ、維持している。

公私協力で設立された経緯から、大分県や別府市の地域社会の国際化と 活性化に寄与することを重要な使命と位置付け、開学前の1999年6月に 「APUからの提案」を発表して、大学と地域とのネットワークづくりを進めて きた。この提案では、[1]「ひとづくり」? leadership skill, anagement skill, communication skillを持った学生の育成 [2]「まちづくり」?大分県、別府市の 活性化・発展への貢献 [3]「えんづくり」?学生と地域の方々とのネットワーク 構築??を基本コンセプトとしている。

学生と地域との交流

開学時から事務局に学生と地域との交流をコーディネートする職員を配置し ている。現在では4 名の職員がこの業務を担当し、年間の紹介件数は約200件、 学生派遣件数は延べ2,000名に上る。開学当初は、地域住民も大学も初めての 経験であり、要領も分からなかったため、お祭りへの民族料理出店依頼、民族 舞踊や民族衣装のパフォーマンス依頼、あるいは地元の名所や企業などの見学 ツアーに学生が参加することなどが主な内容であった。開学から2?3年たっ てくると、日本語や日本文化に強く興味を持ち、何度もこのような地域交流に 参加する学生からは「もっと地域の人々と深い交流をしたい」「大学・大学生だ からできる交流がしたい」というような積極的な要望も多数寄せられるように なり、大学も地域とのさまざまなネットワークを利用して、このような要望に 応えようとした。

そのような中、文部科学省の指導により、小・中学校においては2002年度 から、高等学校においては2003年度から学年進行で、「総合的な学習の時間」 が本格的に実施された。その主要なテーマの1つが「国際理解」であり、これを効果的に実行するために、APUの外国人留学生の力を活用しようという計画 が持ち上がってきた。大学としても、これは理想的な地域交流活動であり、大 学でしかできない地域貢献であるとして、積極的に推進してきた(写真1)。こ の件数は、2002年度あたりは年間数件であったが、現在では年間約150件に まで増加し、大学が紹介する地域交流の7割以上を占めている。特に、文部科 学省が2009年度に改訂した新学習指導要領では、小学校5、6 年で週1コマの 「外国語活動」の実施が盛り込まれ、急激に増加してきた。

開学時に主であった民族料理出店依頼、民族舞踊や民族衣装のパフォーマン ス依頼がなくなったわけではないが、開学から10 年が経過して、地域住民と 学生とのネットワークがさまざまな形で進む中で、大学を通さずとも、住民と 学生間で直接やりとりが行われることが増えてきている。



写真1 地域交流活動の様子

大学誘致の波及効果

なお、APUが位置する大分県別府市の人口は約12 万人。APUの学生数は約 6,200名であるから、市の人口の5%になる。大分県の人口1万人あたりの外 国人留学生数は、34.6人であり、都道府県別で東京都の34.1人をも超えて全 国一であるが、大分県内でも別府市に集中しており、別府市での人口1万人当 たりの外国人留学生数は、266.1人であり、全国平均の26倍である。

また、APUを大分県別府市に誘致した効果については、開学10周年を機に、 大分県と別府市により調査が行われ、「大学誘致に伴う波及効果の検証」として リポートが作成されている。このリポートでは、本学誘致がもたらした経済効 果、人口面での効果、学生の力を活用したさまざまな成功事例等が検証されて いる。活力を生み出す地域の資源として、さらなる本学の活用が期待されてい る。詳細は、大分県ホームページ 政策企画班のコーナーを参照されたい*1


次号では、小中学校教育現場への学生派遣を含めた地域交流や地元自治体と の連携・交流状況等の具体的な内容について説明したい。

*1 :大分県政策企画班「大学誘 致に伴う波及効果の検証」
http://www.pref.oita.jp/soshiki/10111/seisaku.html