2010年7月号
イベント・レポート
科学・技術フェスタ in 京都-平成22年度産学官連携推進会議
初の高校生等向けのイベントが好評

「科学・技術フェスタ in 京都−平成22年度産学官連携推進会議」が6月5日、京都市の国立京都国際会館で開かれた。産学官連携推進会議としては 9回目になるが、今回は初めて高校生などを対象にしたさまざまなイベン トを企画し、それを前面に出した。昨年まで2日間だった日程は1日にな り、分科会とそれに続く全体会合(各分科会報告、提言取りまとめ)はなく なった。産学官連携推進会議の色彩が抑えられた一方、子どもの手を引い たお母さんたちや、談笑しながら行き交う中高生たちが目立った。

新成長戦略のエンジンに

メーンホールでは、初めに相澤益男総合科学技術会議議員が「未来を切 り開く科学・技術」と題して基調講演を行った。グリーン・イノベーショ ンとライフ・イノベーションを引き合いに、新成長戦略のエンジンとなる 科学・技術の実現を目指したいと述べるとともに、新興国の台頭、世界の ダイナミックな変化、日本の存在感低下という危機の中で、わが国の科学・ 技術基礎体力を抜本的に強化することの必要性を訴えた。また、理科が好 きという小学生の比率は国際平均より高く、楽しんでいることが分かるも のの、中学生になるとその比率が国際平均を下回ってしまうことに憂慮を 示した。

益川敏英京都産業大学教授は、科学はどの分野も大型化せざるを得ないが、われわれはそれを支えていく義務があることと、役に立つまでに100年かかることを覚悟しなければならないことを指摘し、社会にそういう認 識を持ってもらうことが重要と強調した。

米ヒューストンから山崎宇宙飛行士

続いて「山崎直子宇宙飛行士からのメッセージ」。会場と米国ヒュースト ンをつないだ双方向のやりとりで、4月5日のスペースシャトル「ディスカ バリー」打ち上げから帰還までの映像を映しながら山崎さんが説明した。

次に高校生(檀上の代表3 人と会場から2人)の質問に山崎さんが答えた (写真1)。山崎さんは「宇宙に行くと地上の常識が通用しない。皆さんも広 い視野を持ってほしい。厳しい状況でも、違う視点から見れば突破口が開 けるかもしれない。その際、1人では限界があるので、チームワーク、仲 間への思いやりが必要」と語った。山崎さんとメーンホールのテレビ電話 方式のやりとりは、会場の画面が大きいこともあって迫力があり、会場に いた人々を魅了した。



写真1 高校生の質問に答える山崎宇宙飛行士

東北大学の川島隆太教授は脳の働きを可視化する最先端技術、生活習慣 と脳の発達などについて分かりやすく解説するとともに、産学連携を通じ て得た資金を中心に研究を行っていると述べた。

三菱ケミカルホールディングスの小林善光社長は新・炭素社会を化学技 術(脱・化石燃料)により創造する「CO2の輪廻(りんね)」が重要であると述 べた。また「これからのイノベーションはソリューションプロバイディン グでなければ単なる“インベンション” で終わる」と、技術革新だけではな く、ビジネスのあらゆるプロセスの中で革新を起こし価値を生み出してい くことが、今の時代のイノベーションのあるべき姿だと述べた。

山形大学の城戸淳二教授は、現在ソニーの最新技術であるフレキシブル 有機EL は間違いなく世界一の技術であるが、ドイツやフランスなどに優秀 な企業が控えていると危機感を述べ、今後日本は、法人税率を下げること、 一県一産業を生み出すこと、一極集中をやめることが重要、と主張した。

筑波大学大学院の山海嘉之教授は、健 康・長寿社会を支える人支援産業の創出 を柱とした“人間支援型のテクノロジー の国際標準化”を目指すと述べた。また、 「未来開拓への挑戦」ができるよう、もっ と若い世代が生き生きと活躍して心にゆ とりを持てるような人材育成環境実現へ の夢を語った。

ノーベル賞科学者がメッセージ

アネックスホールなどで行われた高校 生等向け特別イベントも総じて好評だっ た。トヨタ自動車のパーソナルモビリ ティーの実車展示や、日本科学未来館の 実物やCG による「iPS 研究」の紹介は話題を呼んだ。「高専ロボコン」受賞ロボットのデモンストレーションの会場 は終始にぎわっていた(写真2)。



写真2 高専のロボット・デモンストレーション

ノーベル賞科学者の小柴昌俊、小林誠、田中耕一の3氏による「君への メッセージ」というシンポジウムは高校生等が対象とされていたが、小学 生からも質問があったし、立ち見が出るなど盛況であった。特に小柴氏は、 言葉の端々に若者への応援メッセージが添えられていた。子どもたちには 貴重な経験であり、大人も子ども以上に楽しんで聞いている様子がうかが えた。最後の質疑応答で、「将来、理科の先生になりたい」という高校生の 志を、小柴氏は大いに褒め、生徒が理科を好きになるには理科の好きな先 生と出会うのが大事だと述べた。

イベントホールでは、例年のように企業、大学・研究機関、自治体等の 研究開発成果の展示が行われた。展示ブースは約400。第8回産学官連携 功労者表彰受賞者の展示や、「若手研究者による科学・技術説明会」もあっ た。

また、知財などの実務に関するワークショップが会場内の各部屋で開か れた。

(本誌編集部)

高校生等向けイベント
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の成果発表

SSH は先進的な理数教育 に取り組む高等学校であ り、現在は全国の125校が 指定され、研究を実施して いる。当日は、京都近郊に あるSSH 指定校9校の生徒 によるポスター発表が行わ れた。どの学校の生徒も精 いっぱい、研究成果発表の 準備をし、ブース来場者に 対する説明は充実したもの となった。来場した研究者や一般の方々からも熱心な質問がなされ、生徒 にとって、発表し説明する力を鍛える良い機会となり、自分の研究をあら ためて見直す場となったようだ。「次回の発表会に向けて、さらに実験・観 察等を深めていきたい」という力強い生徒の言葉から、今回の経験を生か した生徒たちの研究・発表内容の向上が、今後も十分期待される。

(田口 秀彦:独立行政法人科学技術振興機構(JST)  科学コミュニケーション推進本部 理数学習支援部  先端学習担当 調査員)

視覚障がい者への科学コミュニケーションの取り組み 事例紹介

高校生イベントを見学する津村啓介内閣府大臣政務官
(提供;内閣府)

地域の科学舎推進事業で支援している「科学へジャ ンプ」では、視覚に障がいを持つ児童生徒の科学や数 学の学習におけるバリアフリー化を目指して、五感を 使った科学コミュニケーションの手法開発を行ってい る。今回の展示では、実際に使用されている教材(点 訳ソフト、凹凸のある地球儀、犬やオオカミなどの骨 の標本など)や手法を紹介した。多くの生徒や来場者 に加え、津村啓介内閣府大臣政務官にもお立ち寄りい ただき、実際に教材を手にしながら、障がいを持つ児 童生徒に対するこうした取り組みの重要性について、 熱心に耳を傾けていただいた。

(島田 純子:JST 科学コミュニケーション推進本部 科学ネットワーク部 地域ネットワーク担当 主査)

サイエンスチャンネルの特別上映

IT 活用型科学技術情報発信事業で行っているサイエンスチャンネルの番 組のうち、科学オリンピックやSSH などの高校生が活躍する映像をはじめ、 暮らしの中の身近な題材から、最先端の科学技術の紹介まで、子どもも大 人も楽しみながら「科学」に触れることができる番組の数々を大画面で上映 した。気軽に座れて番組を楽しめる雰囲気の中、子ども連れのご家族や、 高校生同士、学校の先生や企業の方などさまざまな方々に足を止めていた だいた。

(西 亮:JST 科学コミュニケーション推進本部  科学ネットワーク部 メディアネットワーク担当 主査)

日本科学未来館 実験教室と先端科学技術展示

日本科学未来館では、実験教室(バイオDNA・超伝 導)、「iPS 細胞」展示、「中心のない地球のみかた」展示 を実施した。実験教室では、約100名の高校生の参加 があった。バイオDNA ではDNA 抽出実験に加えiPS 細 胞の紹介や京都大学iPS 細胞研究所の浅香勲先生を交 えた質疑応答、超伝導では誘導電流やピン止め効果な どの体験や鉄系超伝導体など最新のトピックを交えな がら超伝導の不思議な現象を体験した。「iPS 細胞」展 示では生きたままのサンプルを中心に4種類のヒト細 胞を展示し、話題の研究でもあることから多くの参加 者が興味深く見学した。「中心のない地球のみかた」で は現在当館で進行中のプロジェクトを紹介し、「触れる地球」の展示を通し て、未来に向けた新しい地球理解のための視点を発信した。

(谷村 優太:日本科学未来館 科学コミュニケーション推進室  学校連携担当)

科学・技術フェスタin京都
平成22年度産学官連携推進会議
日時:平成22年6月5日(土)
   9:30〜16:30
会場:国立京都国際会館
   (京都市左京区宝ヶ池)
主催:内閣府、総務省、文部科 学省、厚生労働省、農林 水産省、経済産業省、国 土交通省、環境省、日本 経済団体連合会、日本学 術会議、科学技術振興機 構、新エネルギー・産業 技術総合開発機構、情報 通信研究機構、日本学術 振興会、理化学研究所、 産業技術総合研究所、物 質・材料研究機構、日本 原子力研究開発機構、工 業所有権情報・研修館、 宇宙航空研究開発機構、 海洋研究開発機構
URL:http://www.kagakugijutsufesta.jp/