2010年8月号
連載1  - 会社を辞めたら社長になろう
第1回
株式会社まちづくり三鷹のSOHO起業のノウハウ
顔写真

前田 隆正 Profile
(まえだ・たかまさ)

SOHO CITY みたか推進協議会
会長


東京都三鷹市は、地域産業の活性化策の1つとしているSOHO(Small Office Home Office)の創出、集積に取り組んでいる。インキュベーション施設からは、この12 年間に約250 社が巣立っている。

はじめに

7 月26 日の厚生労働省の発表によれば、2009 年の日本人の平均寿命は男性79.59 歳、女性は86.44 歳。60 歳の男性はあと20 年、40 歳の男性はまだ40 年もある。会社のため、自分のため、家族のため、社会のため、国のため、世界のため、皆さんは働いてきた。それもサラリーマンとして。就業には、もう1つ起業するという道がある。これは、学校や大学では教えてもらっていないが、後の半生は、ぜひとも自分が主体となって、起業してはいかがだろうか。

デジタルの時代になって、日本国内外どこでもインターネットでつながる。インターネットを活用すれば、自分がやりたいこと、自分が楽しいこと、自分が得意なこと、自分が好きなことを、資金を使わないで、定年のない起業をすることができる。

三鷹市では、この12 年間に約250 社のSOHO(Small Office HomeOffice)が巣立っている。そのほとんどは1人で起業し、1人で事業を経営し、初年度から黒字で、1 社もつぶれていない。

1918 年に松下幸之助氏はパナソニックを、1960 年に辻信太郎氏はサンリオを、1962 年に飯田亮氏はセコムを、1977 年にスティーブ・ジョブズ氏はアップルコンピュータを起業している。ビジネスを起こしたことがその後の各社の今日を生んでいるのである。皆さんも、65 歳で起業したケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダースのような幸運に恵まれるかも知れない。

自分が主体となって起業し、その事業を通して社会に貢献し、自己実現する。自分が生まれてきた証左をこの世の中に残してみては。終わり良ければすべて良しである。

皆さん、会社を辞めたら社長になろう。起業する皆さんの事業が、これからの日本経済を支えていく可能性があるかもしれない。

背景

三鷹市では、1988 年からの10 年間で320 あった工場のうち80 の工場が市外に転出、3,500 人の雇用を喪失した(図1)。これに対し、SOHO(Small Office Home Office) の集積で産業振興と財政基盤の安定を図り、高環境・高福祉の情報都市づくりを目指すこととし、1998 年7 月「SOHCITY みたか構想」を発表、「SOHO CITY みたか推進協議会」を発足させた。1998 年12 月、駅前に「SOHO パイロットオフィス」を開設して以来、今日まで合計8 つのSOHO オフィスの115 ブースと、コミュニティビジネスサロンのレンタルデスク18 席を設置している。

この市内133 のSOHO ブース・デスクから誕生したSOHO 180 社(含転出)と「SOHO ベンチャーカレッジ」を修了しHO(Home office) を立ち上げた70 社を加えると、三鷹市が関与して誕生したSOHO は合計約250 社と推定される。

図1

図1 三鷹市内の工場の流出

三鷹市「SOHO 事業効果調査報告書」(2007 年9 月)によれば、市内8 つのSOHO オフィスに入居している115 社のうち、インタビューに応じた67 社の平均売上高は5,365 万円、平均雇用数は6.7 人(常勤5.4 人、臨時1.3 人)である。つまり、SOHO によってビジネスと雇用が創出されることが明確になった。

株式会社まちづくり三鷹の誕生

株式会社まちづくり三鷹は、1998 年7 月に制定された「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」(中心市街地活性化法)に基づき、三鷹市のまちづくりと中心市街地活性化事業を行うまちづくり機関(TMO: Town Management Organization)として、1999 年9 月28 日に設立された*1

2001 年4 月に、市民の自主的なまちづくり事業を支えてきた財団法人まちづくり公社を統合。講師派遣やワークショップ方式等のまちづくり支援事業だけでなく、三鷹市の施設管理などの事業も実施している。

したがって、従来の第3セクターの枠を超え、自治体の公共性と公平性と、民間の柔軟性とスピードを兼ね備えたまちづくり機関として、三鷹の地域資源をベースとしながら、市民・大学・事業者の方々との連携により、まちづくり全体をプロデュースしている(図2)。

SOHO CITY みたか構想の推進・SOHO 起業支援

株式会社まちづくり三鷹は、三鷹産業プラザ、三鷹市三立SOHO センターなどの産業拠点や、市内に設置された光通信網を生かして、新しい創業形態であるSO(Small Office)の集積を推進、テレワーク・在宅勤務となるHO(Home Office)の育成を図り、以下のような支援のメニューをそろえている。

図2

図2 株式会社まちづくり三鷹と各機関との連携

(1)SOHO インキュベーション施設の整備運営

表1の8 つのSOHO 施設の整備運営を行うとともに、新たなSOHO インキュベーション施設、または一般賃貸ビルをSOHO 向け施設へ転換させる際のお手伝いをしている。

(2)SOHO CITY みたか推進協議会

SOHO を応援するための応援団である。設立当初から地元企業や大学の学識者など160 の人や団体が参加しており、顔の見える関係の中で三鷹SOHO の集積を支援してきた。

今後は、これまで三鷹で誕生した先輩のSOHO がメンターとして、三鷹にこれから生まれるSOHO を組織的に支援する体制を整えていく予定である。

(3)SOHO 打ち合わせコーナーの設置

表1 三鷹市のSOHOオフィス一覧

表1

三鷹産業プラザ2 階に、市内SOHO 事業者を支援する打ち合わせコーナーがある。SOHO事業者が、自由にいつでも予約してその顧客と商談をすることができる5つのテーブルが配置されている。そのほか、市内のSOHO が打ち合わせに利用できる施設には、三鷹市SOHO パイロットオフィスの会議室、三鷹市三立SOHO センターの会議室、さらに三鷹産業プラザ地下1階の「コミュニティビジネスサロン ミーティングスペース」に2 脚のテーブルがある。

(4)ビジネス相談窓口の設置

三鷹産業プラザ2 階 SOHO 事業者商談コーナーの奥に、SOHO の起業・経営・会計・税務・法律・特許などの相談、SOHO のビジネスマッチングなどの機能を合わせ持つSOHO コーディネーターや専門家によるビジネス相談コーナーを設けている。

(5)SOHO ベンチャーカレッジの開設

SOHO ブースの入居者を募集すると応募者は3 ~ 5 倍になるので、事業計画の審査に合格して入居するのは、いきおい実現性の高い事業計画を提出した事業者になる。そのため、入居事業者は黒字決算を実現し、順調に発展する。事業計画の実現性が小さく、入居審査で落ちて入居できなかった事業者が、独自で起業し失敗した例があったので、起業の実務を教育する起業するための講座「SOHO ベンチャーカレッジ」を2002 年4 月、株式会社まちづくり三鷹で開始した。こうした講義内容は高校・大学で教育していない。この「SOHO ベンチャーカレッジ」は、現在、第13 期の講座がNPO 法人三鷹ネットワーク大学で開催されている。

(6)ビジネスプランコンテスト

地域から新しい産業、新しい事業者、新しい人材を育てるために、ビジネスプランコンテストを行い、独創的な事業計画(ビジネスプラン)についてのコンテストを行っている。

(7)SOHO フェスタの開催

毎年三鷹SOHO の技術や製品・サービスを展示紹介し、商品やサービスの発表の場を提供することによって、新しいビジネスチャンスを創り、また、SOHO 講演会、パネルディスカッションや地方のSOHO 都市とのリレーフォーラムなどを開催している。

(8)コミュニティビジネスサロン

三鷹産業プラザの地下1 階に、コミュニティビジネス活動をしている方、コミュニティビジネスを始めようとしている方が利用できるサロンを運営している。月額8,000 円、6カ月前払いで借りられるレンタルデスクが18 脚(光ファイバー端子、郵便受け、パソコン収納ロッカー付)と、無料のミーティングデスクが2 脚、1 時間1,000 円のセミナールームとレンタルパソコン4台がある。ほかに予約してSOHO 起業相談・経営相談(無料、三鷹市内・市外在住者可)を受けるコーナーもある。

(9)三鷹i クラブ

三鷹SOHO 事業者や企業が、相互のネットワークを通じコミュニケーションを図り、会員相互の発展に資することを目的とするビジネスクラブである。年会費は6,000 円。入会審査がある。

特典は [1]「三鷹産業プラザ2 階打ち合わせコーナー」「三鷹市SOHO パイロットオフィス会議室」「三鷹市三立SOHO センター会議室」「コミュニティビジネスサロンのミーティングスペース」が無料で利用できる [2]コミュニティビジネスサロンの「レンタルデスク」「レンタルパソコン」「セミナールーム」、三鷹産業プラザ7 階貸会議室・3 階IT ルーム・駐車場回数券が割引料金で利用できる [3]「三鷹i クラブニュース」の配信・情報掲載 [4]SOHO CITY みたか「SOHO ポータルサイト」への企業情報の登録 [5]会員相互間の交流会への参加 [6]まちづくり三鷹主催セミナーの割引など。

みたか身の丈起業塾

株式会社まちづくり三鷹とNPO 法人三鷹ネットワーク大学は、内閣府の地域社会雇用創造事業交付金(平成22、23 年度)を得て、「みたか身の丈起業塾プロジェクト」を実施している。

本プロジェクトは「みたか身の丈起業塾」と「みたかソーシャル&コミュニティビジネスプラン・コンペティション」の2 つの事業で構成されている。

 「みたか身の丈起業塾」は、社会的企業(最大利益の追求ではなく、社会的、地域的課題の解決をビジネスの手法で解決することを事業とする企業)を起業する人財を育成するための、講座受講とインターンシップを行う。また、「みたかソーシャル&コミュニティビジネスプラン・コンペティション」では、社会的企業を起業する人を支援するため、ビジネスプラン・コンペティションを開催し、選定者に起業支援金最大300 万円を交付する。

本プロジェクトは、この両事業の連携による実施を前提としており、「みたか身の丈起業塾」で研修やインターンシップを経験した人が、「みたかソーシャル&コミュニティビジネスプラン・コンペティション」に参加して審査を受け、良質なプランが起業支援金を受けるという流れを軸に、人財育成の総合的な仕組みを構築するものである。

2010 年5 月17 日~ 6 月11 日、『社会に貢献できる起業をしたい人、三鷹に集まれ!』と称し、同プロジェクト第1期の受講生募集を行った。受講生は30 名、受講開始は7 月1 日である。今回の募集は、この2 つの事業のうち、「みたか身の丈起業塾」について、講座受講とインターンシップを合わせた6 週間のプログラムに参加する受講生を募集するものである。三鷹市民以外の方も申し込むことができ、社会的企業に興味のある幅広い人財が、三鷹に集まることが期待されている。また、希望する受講生について、所定の要件を満たせば、最大月10 万円までの活動支援金が提供される*2


この株式会社まちづくり三鷹は、創業以来11 期連続で黒字決算を続けている。ちなみに、第11 期(H21.4.1 ~ H22.3.31)の決算は売上高834,267 千円、当期利益21,298 千円、従業員は47 人である。

次号から、「会社を辞めたら社長になろう」を実現している三鷹市のSOHO の例について述べる。

*1
もともと、株式会社設立の発想は、三鷹市が1996 年3 月に多摩地域で初めて策定した産業計画「三鷹市 産業振興計画」の中に三鷹市の産業振興施策の主体として位置 付けられていた。その後、中心市街地活性化法の制定によって、 株式会社まちづくり三鷹はTMO としての機能をも合わせ持つ形で株式会社が設立された。そのため、三鷹駅前の17 ヘクタールの中心市街地活性化エリアではTMOとしての役割を果たし、三鷹市全域におけるまちづくり、とりわけ商業および工業振興、地域情報化施策については、三鷹市の個別計画に基づき市と協働して事業を実施している。その中で、三鷹市地域情報化計画の中で掲げられた「SOHO CITY みたか構想」の実質上の推進役を果たしている。

*2
第2 期生は8 月6 日募集締め切り、講座は8 月23日~ 10 月5 日まで。第3期生は2011 年1 月14 日募集締め切り、講座は2011年2 月1 日~3 月15 日まで。第4 期生は2011 年3 月4日募集締め切り、講座は2011 年4 月5 日~ 5 月20日までである。