2010年9月号
単発記事
中小企業が中国に販路開拓
TAMA協会、上海と交流事業
顔写真

岡崎 英人 Profile
(おかざき・ひでと)

一般社団法人首都圏産業活性化協会
事務局長


ものづくり系を中心とした中小企業の場合、従来、アジアへの関心はもっぱら「生産拠点」としてだったが、「販売先」ととらえるようになった。TAMA 協会の先駆的な取り組みを紹介する。

TAMA 協会の海外展開支援

一般社団法人首都圏産業活性化協会(TAMA 協会)は、中小企業の海外への販路開拓支援を実施している。その一環として今春、中国・上海に事務所を開設した。

当協会の中国での取り組みは2002 年に始まった。当初は物価、人件費の安い中国で工場を建て、製品を製造するビジネスモデルを学ぶ、視察レベルの交流であった。つまり、同国を「生産拠点」として見ていたわけだが、2007 年からは「市場」としてとらえ、日本製品の中国での販路を開拓していくため、上海企業とのビジネスマッチングに主眼を置いた。

経済成長が著しく、世界の市場としての注目が集まる中国。われわれは、先行して中国への展開を進めている会員企業をモデル企業として、リスクの少ない海外展開を支援した。現在では、TAMA 協会が進めている環境ものづくり事業に呼応して、中国でのニーズが見込まれる、日本の優れた環境製品・技術を支援の中心に据えている。

上海への進出を考えている中小企業には、まず「上海ビジネス研究会」とネーミングした勉強会のセミナーで現地事情等を学習し、現地でのビジネス展開のプランを十分に練っていただく。その後に、現地商談会などにより有力な現地連携企業とのマッチング、継続商談や交渉・契約、そして取引となる。われわれは、上海進出のための情報提供、準備から取引のフォローまでの一気通貫の支援を行っている。

TAMA 協会の海外展開支援モデル

地元中小企業の海外展開を支援する場合、次の2 つの条件を満たすことが前提となる。

1 つは、TAMA 協会と気持ちを同じくする支援機関(連携パートナー)が海外にあることである。企業や大学が単独で海外展開を行うのは大変なことで、現地での段取りをすべて自分でやることになるので、工数もかかり、膨大な費用に対して効果が釣り合わない。

従って、海外のある地域と交流しようという場合、まず、日本の支援機関と類似した機関を探して訪問し、相手機関(人)と仲良くなるとともに、相手機関にとってのメリットを提示することが必要である。中小企業の場合、海外企業との取引で一番心配なのは、相手企業の信用力調査である。海外で信頼のおける支援機関がパートナーとなれば、この問題が少なからず解消できる。

2 つ目は、TAMA 協会の活動と現地の事情に精通した良きコーディネータを発掘・活用することである。TAMA 協会は、上海に現地法人を持つコーディネータと協力し事業を進めている。日本・中国両国の文化や商習慣を理解しているコーディネータを介すことにより、中国展開を希望する日本企業と、現地のカウンターパートや現地企業との円滑なコミュニケーションが可能となる。

上海市工商業連合会(カウンターパート)との連携

上記のモデルに従い、上海では2 万社を超える民間企業を会員としている上海市工商業連合会と連携している。

写真1

写真1 現地商談会の様子

経過は次の通りである。上海市徐匯(じょわい)区との連携をきっかけに、徐匯区工商業連合会の会長から上海市工商業連合会を紹介していただき、2009 年11 月に上海で商談会を実施したことが共同事業のはじまりである(写真1)。この時は、優秀な環境技術を持つ企業を現地に引率し、現地企業とのマッチングを図ったが、日本企業からの商談ニーズに基づいた現地企業への商談会周知や、商談会場の提供等に全面的に支援していただいた。

その際、連合会の海外担当責任者に聞かれたことが印象的であった。「貴方が考える海外展開で重要な事は何ですか?」との質問に、私は「マッチング会終了後のフォローが大事である」と答えた。これが、現地の責任者の考え方とシンクロしたのである。上海においては、いろいろな国の企業の展示会や商談会の支援をしたものの、その後のフォローが無いため、あまり具体的な商談につながっていないということだった。

TAMA 協会ではこの商談会の案件について、コーディネータを介して日中のビジネスをフォローした。これが功を奏して、同年12 月に同連合会と産業振興についての覚書を締結し、継続的な協力体制を構築した。2010年3 月の2 回目の商談会を開催した際には、同連合会傘下の環境保護産業商会とも覚書を締結した。

TAMA 協会上海事務所設立
写真2

写真2 事務所の入っている
    工商業連合会ビル

協力の覚書を締結した上海市工商業連合会のご厚意により、上海市の中心部(外灘)に位置する同連合会のビルの1 室を低廉な価格で借用することができたため、ここに2010 年3 月、上海事務所を開設した(写真2、3)。中小企業の上海進出支援の本拠地であり、日本企業を中国にPR する場でもある。

この事務所には日本の製品を常設展示している。日本語を話せる現地スタッフが常駐し、日本企業と中国企業の商談の支援も可能だ。

現在は、会員企業の製品展示だけではなく、八戸市や帯広市からの委託を受けてその特産品も展示している。


写真3

写真3 上海事務所

日本は、技術で勝って事業(ビジネス)で負けていると言われて久しい。広大なマーケットを持つ中国に、日本の中小企業が単独で進出するには時間とお金がかかる。従って、これまで海外展開していない高い技術を持つ中小企業のために、マインドが合う日本企業と上海企業がWin-Win になれる連携体制づくりを積極的に支援していきたい。理想は、上海企業に日本製品・技術を売っていただき、その間、日本企業の新たな製品・技術開発を促進すること。そして、“技術で勝って、事業でも勝つ日本企業” へと、脱皮を遂げていただくことに全力を傾注したいと考えている。