2010年9月号
編集後記

室戸岬を訪ねた。竜馬ブームに便乗したのではない。ここでは海洋深層水を利用した海藻の陸上養殖が実験されている。実は当ジャーナルの2006 年11 月号に紹介されているものだ。助成はJST のRSP 事業から農林水産省の雇用促進事業へと、研究者は大野正夫高知大学名誉教授(当時)から平岡雅規准教授に引き継がれていた。6 年の歳月を経てようやく実用化のめどが立ってきたという。海水の温度上昇によりアオノリの生産がままならない状況にあるという環境変化も、この実験の意義を示している。アオノリの種を培養して6 週間後には、100 万倍に育てて出荷となる。一連のラインは非常にきれいに整備されていたが、それも6 年間の研究成果の表れだ。「研究が実用化されるまでに10 年はかかる」といわれる東北大学の大見忠弘先生の言葉を思い出した。      

(編集委員・平尾 敏)

文部科学省から平成21 年度の産学官連携活動の各種実績が発表されたが、世界的な経済不況の影響もあって、総じて伸び悩む結果となった。本来ならば、産学連携は景気に左右されず、不況の時こそ伸びるべきものであってほしい。ただ、具体的な成果事例を見ると、産学連携によって、健康・長寿、環境・エネルギーをはじめとするさまざまな課題の解決に資する成果が上がりつつある。社会的課題の解決に対して事業性を見いだし、「新たな産業・新たな働き方・新たな生き方」を創出する主体として注目されているものに、ソーシャルビジネス(SB)があるが、大学や企業は、これからの産学連携の1 つの方向性として、市民、行政、関係機関等を協働のパートナーとした究極のソーシャルビジネスを目指すべきである。

(編集委員・松田 一也)

宮崎の口蹄疫はひとまず落ち着いたが、メディアの報道を見聞きする限り、きちんと総括しているようには感じられない。この問題は初動対応のまずさが指摘されるが、個人の責めに帰すべきでなく、あくまでも防疫体制の問題である。行政の責任は大きいが、それだけだろうか。平時、大学人が今回のような事態を予見し警鐘を鳴らしてきたのか。畜産、動物の感染症、あるいは危機管理、行政の仕組みなど多くの分野の研究者がいる。大動物の獣医が不足していると言われるが、獣医学からの窮状の訴えはあったのか。これらの警鐘はあったかもしれないが、国民には届いていない。政高経低――何ごとも政治家、行政への期待が高く、うまくいかないと責任が問われる。口蹄疫問題で、責任を問う声がないことに大学人は危機感を抱くべきだろう。

(編集長・登坂 和洋)