2010年10月号
特集1  - 水素プロジェクト
福岡市の産学連携施設で九大応用化学チームが研究
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井上 孝和 Profile
(いのうえ・たかかず)

福岡市 経済振興局
産業政策部 科学技術振興課
科学技術係長

福岡市産学連携交流センターでは、九州大学の応用化学部門の研究室が水素の研究を進めている。市は市民への水素エネルギー啓発活動にも力を入れている。

九州大学の新キャンパス(「伊都キャンパス」=福岡市西区元岡地区など)への移転(学系により2019年度まで移転継続)を契機として、福岡市は同キャンパスメインゲートのそばに、レンタルラボと産学交流機能を併せ持つ「福岡市産学連携交流センター」を整備した。産学官で取り組む九州大学学術研究都市づくりの先導的施設として位置付け、2008年4月に供用開始し、九州大学や公的研究機関と企業の研究部門が同居している。  

その1つ、九州大学大学院工学研究院応用化学部門の研究室が水素関連の研究に取り組んでいる。  

石原達己教授 テーマ「次世代エネルギー発生と環境浄化」

水素社会実現に向け、水素を得る革新的な方法として、太陽光による水素合成のために色素を用いて増感した光触媒を開発するとともに、得られた水素から直接電力を得ることができる燃料電池の開発を行っている。現在までに、最高性能の酸素イオン伝導性を示す新材料を発見するとともに、燃料電池の中で最も安定性が高く、燃料の制限が少ない固体酸化物型燃料電池の開発を産学連携により成功させている。  

小江誠司教授
テーマ「水素酵素(ヒドロゲナーゼ)を範とした水中触媒の開発」

2008年に常温・常圧の水中において、水素から電子を取り出すニッケル系触媒の開発に世界で初めて成功した。燃料電池で使用する従来の白金系触媒の代替品となれば、燃料電池の大幅なコストダウンが期待できる。こうした研究成果が評価され、2009年3月に将来の学術研究のリーダーと期待される若手研究者に与えられる日本学術振興会賞を受賞した。   

小江教授は将来的に、水から水素を直接つくり出す究極のエコエネルギー実現を目指して、民間企業との共同研究等に取り組んでいる。  

 

また、水素エネルギーに対する市民の理解増進を目的として、毎年夏休みには小中学生を対象に、「九州大学で水素エネルギーを学ぼう」と題し、ペットボトルによる燃料電池の製作体験や九州大学伊都キャンパスにある水素関連施設の見学等を実施している。  

福岡市としては、今後とも水素社会の到来に向けて、最先端の研究開発の支援とともに、市民の理解増進に積極的に取り組んでいきたい。