2010年10月号
単発記事
くまもと技術革新・融合研究会(RIST)の21年
~県の産学官連携の礎として~
顔写真

村山 伸樹 Profile
(むらやま・のぶき)

熊本大学大学院 自然科学研究科 教授/
株式会社ヒューマンテクノロジー研究所
取締役社長/くまもと技術革新・融合研究会(RIST) 会長

技術高度化を通じて地域産業の振興を目指している「くまもと技術革新・融合研究会(RIST)」は20年余りにわたり地道な活動を続け、ここから幾つもの大プロジェクトが誕生している。その取り組み、成果を紹介する。

RISTとは

表1 RISTの事業内容

表1

くまもと技術革新・融合研究会(Research for Innovation and Synthesis of Technology in Kumamoto、通称RIST)は、熊本県域を中心に、産業技術に関する基礎技術の研修、国内外の先端技術の調査研究、産学連携による共同研究、研究シーズに対する情報交換等を行うことで、産業技術開発および実用化を促進して、地域産業の技術高度化、関連企業の振興を図ることを目的とした産学官組織・人材の融合体である(表1)。昭和60年4月に、熊本テクノポリス構想に基づいて、財団法人熊本テクノポリス財団付属の研究所である電子応用機械技術研究所や、熊本大学地域共同研究センターが相次いで設立されたのに伴い、この両者と熊本県工業技術センター(現、熊本県産業技術センター)の研究者を核として平成元年10月に設立した。息の長い活動を続け、平成21年10月には、設立20周年を記念したシンポジウムを開催し、熊本県内外から700名超の参加があった。

表2 RISTの組織構成

表2

当初は、熊本知能システム技術研究会(Research for Intelligent System Technology in Kumamoto)の名称だったが、21年4月に、医工連携、農商工連携などオープンイノベーションを指向した産学官連携の新たな展開を目指すため、現名に改めた。現在の組織は、会長(村山伸樹:熊本大学大学院自然科学研究科教授)を中心に、企業会員30社、個人会員27名、大学・高専関係者173名、熊本県や熊本市等の7団体からなる(表2)。事務局をくまもとテクノ産業財団内に置き、熊本県と連携しながら、特に技術開発の立場から産業施策に影響を与える形で活動している。

事業内容

RISTの事業内容は次の通りである。

1. 最先端技術や企業の関心が高い技術に対する情報提供
2. 基礎技術修得に向けた社員の教育研修
3. 将来発展する見込みのある新技術の調査
4. 企業が関心のあるテーマについての技術検討
5. 事業化を視野に入れた事業化プロジェクト

表3 月間フォーラム(第246回~251回)内容

表3

1.の事業の1つ、月例フォーラムは、最先端の技術テーマや地元の関心が高いテーマについて、内外から講師を招いて毎月開催するものであり、毎回10~30名の参加者による講演と活発な討論が行われている。22年9月で251回となった(表3)。

4.の技術検討会は、その時々において地元企業の関心が高いテーマについてグループを形成し、オープンな形で検討を行う会である。企業人が世話役になり、大学や公的機関の関係者がサポーターとして会を運営する。現在は、センサネットワーク、FEM活用技術、電磁環境研究会、ソフトウエア工学、植物工場、新エネ・省エネ技術利活用の6件の会が、年に4~6回検討会を開いている。

検討会で事業化につながる具体的なテーマが生まれた場合には、さらに踏み込んだ取り組みを行うために、5.の事業化プロジェクトとして活動する。知的財産や実施の問題を明確にするために参加メンバーや公開等を限定し、技術開発者だけでなく、コーディネータとして、くまもとテクノ産業財団等の人材も参加してチームを組み、現在は、医工連携プロジェクト、有機系未利用資源のバイオテクノロジーによるリサイクル、次世代病院情報システム、介護機器開発研究の4テーマが事業化を目指して取り組みを行っている。

RISTの「事業化」成果事例

これらのRISTの活動から国の大型プロジェクトが熊本地区で実施されてきた。その一部を示す。

生活・地域交流研究事業:環境適応型自律作業知能ロボットに関する基礎研究(科学技術庁:平成6~8年)
地域新生コンソーシアム研究開発事業:工程適応型フレキシブルロボット技術に関する研究開発(NEDO;新エネルギー・産業技術総合開発機構:平成9~11年)
都市エリア産学官連携促進事業:スマートマイクロチップの開発(文部科学省:平成17~19年)
地域結集型研究開発プログラム事業:次世代耐熱マグネシウム合金の基盤技術開発(JST;科学技術振興機構:平成18~23年)

さらにこれらの活動から製品化された以下5点を紹介する。

上肢用CPM(医療用リハビリ補助ロボット、写真1):地元企業の櫻井精技株式会社が開発・販売
フレキシブルエンジン工程装置:地元企業の平田機工株式会社が開発・販売
A-MES(活動度計測機器、写真2):ベンチャー企業の株式会社ソリッドブレインズが開発・販売
スキンケア用品レフリエシリーズ:地元企業のリバテープ製薬株式会社が開発・販売
2眼ステレオカメラ:地元企業のオオクマ電子株式会社が開発・販売

写真1

写真1 上肢用CPM

写真2

写真2 A-MES

人的ネットワーク

RISTでは、検討会・研究会活動や月例フォーラム・シンポジウム開催などのオフィシャルな会合だけでなく、いわゆる“飲みニケーション”を会合の後に必ず設けている。RISTの活動を通じて人的ネットワークを大事にしてきたことで、大学等の人間が企業を訪問したり、逆に企業人が大学等を訪問しやすくなり、さらには行政人とも密な信頼関係を築くことができ、熊本地域でのイノベーション開発に対して有形無形の形で貢献してきている。