2010年10月号
連載1  - 会社を辞めたら社長になろう
第3回
三鷹市のSOHO起業例(2)
起業に必要な実務知識を事前に習得
顔写真

前田 隆正 Profile
(まえだ・たかまさ)

SOHO CITY みたか推進協議会
会長


事業を起こす時に欠かせないのは事業計画の作成だが、実際に起業するとなると会社設立の方法を知らなければならないし、会社を立ち上げたその日から会計、営業、資金調達、雇用管理、意匠・商標などさまざまな実務処理が求められる。三鷹市の「SOHOベンチャーカレッジ」ではこうした実務知識を習得することができる。

起業の実際と最初のお客さま

事業を立ち上げる前に、事業計画を作成し起業のための実務を身に付けることが必要である。起業に際して習得しておく実務知識は多岐にわたる。会社の設立方法、会社を立ち上げるとその日から付けるようになる現金出納簿などの会計、自分のお客さまをつくり収入を得る営業、資金が必要になった時に資金を調達する方法、人を雇用する際に必要な雇用管理、起業時には特に必要になる意匠や商標の特許申請などである。独学でも可能だが、三鷹市では、身の丈に合った事業計画と起業のための実務知識を「SOHOベンチャーカレッジ」で習得することができる。この講座には、三鷹市外の方も大勢参加されている。

事業を起こしてもお客さまがつかなければ収入はゼロ。事業が成り立たない。できれば、退職2、3年前から助走ができると万全である。定年前に自分の信頼できるお客さまをつくっておきそのお客さまに、自分が起業する事業の最初のお客さまになっていただくのである。

株式会社レンズ屋 代表取締役 永田信一氏

1995年、38歳で大日本スクリーン製造株式会社を退社。株式会社目白プレシジョンを経て、1997年独立、レンズ設計を業務とする株式会社レンズ屋を設立した。資本金は1,000万円。

高校生の時に反射望遠鏡を自作、光学機器製作の面白さと難しさを知り、大日本スクリーン製造顧問の脇本善司氏にレンズ設計の指導を受け、開眼。光学関連特許18件。

1998年12月、三鷹市SOHOパイロットオフィス開設と同時に入居した。当時、三鷹市が全国自治体で初めてSOHO都市宣言をしたこともあり、テレビ・新聞によく取り上げられた。このパイロットオフィスには、応募した57社から選ばれた9社のSOHOが入居していたが、NHKの取材時、いつも取材対象となったのが、なぜかレンズ屋の永田さんであった。永田さんはニコニコして「若い方がパソコンは教えてくれるし、ホームページはつくってくださるし、大変快適で居心地がいいです」と発言しておられた。そのためか、お客さまは“全国区”である。

社名のとおり、レンズ設計・製作の専門業者で高精度結像光学系から照明用まで、多彩な業務用レンズを手掛けている。実績に恵まれた技術力と、間接費のかからないスリムな体制で、高品質と低コストを実現している。また、設計者が、お客さまと直接打ち合わせながら、ご要望を満たす性能のレンズを設計するのが特長である。また、お客さまには、先進のシミュレーション技術で設計したレンズの性能をあらかじめお知らせしている。

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(株)レンズ屋の製品例

レンズの製作も1本から受注、レンズ屋で設計したレンズの製作は社外のものづくりの専門家の手で1本1本丁寧につくられ、出来上がったレンズはすべてレンズ屋が責任を持って検査し、納入している。

設計は永田さんお1人で担当、ご自分の設計できる範囲に仕事を制限されている。年商は3,000万円程度である。

株式会社アファン 代表取締役 藤川陽一氏

1992年日本電信電話株式会社(NTT)に入社し、2002年32歳で退社。同時に早稲田大学大学院に入学、MBAを取得。大学院在学中に第1期SOHOベンチャーカレッジを卒業。2003年12月、33歳で株式会社アファンを設立、代表取締役に就任。

事業コンセプトは、「安全」「効率的」「効果的」「リアルとバーチャルの融合」の4つをモットーに、IT技術を駆使した新しいスポーツトレーニングシステムの企画・開発である。商品開発については、早稲田大学人間科学部、体育会と共同で進めている。

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(株)アファンのソフト商品例

空手道5段、柔道3段、全日本空手道選手権に8回出場、ベスト8入賞4回の実績から「動体視力トレーニング」ソフトを商品化、「武者視行」のパッケージ商品を販売し、新聞・テレビなどに取り上げられた。また、一部東京6大学野球部や少年野球に採用され話題となったこともあった。

その後、動体視力の強化が認知症の予防になること、さらには高齢者の脳トレーニングとして有効であることが認証され、最近は各地の自治体で取り上げられ、その普及研修に取り組んでいるところである。現在、これらプログラムのゲーム化を検討中である。

社員は2名。年収は、NTT時代の年収をほぼ超えるといったところである。

NPO法人グレースケア機構 代表 柳本文貴氏

元はコムスンのグループホームの施設長。コムスンの解体(2008年3月)を控えた2007年10月、第8期SOHOベンチャーカレッジを受講。「新しい介護システム」を掲げて2007年の「三鷹ビジネスプランコンテスト」に応募した。それは低賃金・低待遇、そんな介護の現状を変えようとするケアサービスの自由介護の提案であった。そして見事「コミュニティビジネス賞」に輝いた。

2008年4月、38歳でNPO法人グレースケア機構を設立。利用者が必要とする幅広い生活支援サービスを、介護保険や障害者サービスの制度の枠にとらわれずに提供している。介護職は、決められた報酬の中で決められた仕事しかできない。しかし、利用者は、本当はもっとやってもらいたいことがあり、介護職もそれに応えられる能力がある。実際に、もう少し資金を出してより良いサービスを受けたいという人が大勢いる。

介護保険のメニューに限らず、あらゆる相談に親切・丁寧にお応えすることで、年齢・障害・病気をハンディにしない、充実した生活づくりのお手伝いをすることができる。例えば、「ケアサービス」としては、買い物や外食、旅行のお供、通院の付き添い、冠婚葬祭やお墓参りの同行、入退院の準備、ペットや庭の手入れ、認知症や脳卒中等疾患に応じた援助、仕事や趣味・スポーツの援助、仲間づくりや出会いの場の提供、家事・パソコン・携帯電話等の支援、秘書・通訳・着付け・身体介護などがある。また、「相談サービス」は、施設やホーム・病院選び、マネープラン、遠距離介護や同居介護の方法、ご家族・ご親族間の調整、ケアについての見通し、いろいろな介護サービスの内容・選び方、住宅改修、道具の活用、成年後見、遺言・相続、身辺整理などがある。料金は1時間2,940円、1か月16,800円から。グレースケアでの時給は1,800円以上である。

柳本さんは、1970年生まれ、大阪大学・佛教大学卒。社会福祉士、ケアマネジャー。オフィスは、三鷹市SOHOパイロットオフィス3Fである。「介護の仕事を、『まごころ』や『やりがい』に頼って、安い賃金に抑えようとするのはおかしい。介護にまごころを持って働き続けるのには、仕事に見合った評価が必要不可欠」というのが、柳本さんの主張である。現在のスタッフは48人。利用会員数は61人。将来的には、年収1,000万円のケアワーカーを誕生させたいとのことである。

株式会社コミュニティ・クリエイション 代表取締役社長
佐藤弘人氏

長野県塩尻市立図書館が2010年4月から稼働させた「図書館情報システム」が、全国自治体の注目を集めている。基本設計が無償公開されているオープンソースのプログラム言語「Ruby(ルビー)」を使って開発したソフトを活用し、システムの導入費用を大幅に抑えたのが特徴であり、このシステムを開発したのは株式会社まちづくり三鷹である。通常人口10万人規模の自治体の図書館システムは5,000万円程度といわれるが、Rubyを使うことで半額の2,500万円程度で納入できる。通常5年ごとのシステム更新も不要で、必要に応じて一部を手直しすれば済むという。

佐藤さんは、ジャスダック上場企業のジャパンシステム株式会社自治体営業部長だったが、2007年3月、47歳で退職。株式会社まちづくり三鷹の「図書館情報システム」の開発に携わり、2009年4月、このシステムの全国自治体への売り込みを担当する株式会社コミュニティ・クリエイションを資本金150万円で設立した。

以来、自治体関係のシステムの開発実績は、株式会社まちづくり三鷹をはじめとする11団体、また民間の取引企業は、日本電気株式会社、富士通株式会社、富士通エフ・アイ・ピー株式会社、富士通ネットワークソリューションズ株式会社、アライドテレシス株式会社等である。

ちなみに、オフィスは三鷹産業プラザ3階にあり、2009年度決算は、売上高約2億円、経常利益500万円、従業員は10名である。


次号では、女性のSOHO とベンチャーとして有望なSOHO をご紹介する。