2010年10月号
連載3  - 徳島大学 知的創造サイクルに向けて
(中)
「研究者」と研究成果を定期的に情報発信
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佐竹 弘 Profile
(さたけ・ひろむ)

徳島大学 産学官連携推進部 副部長、教授



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新居 勉 Profile
(あらい・つとむ)

徳島大学 産学官連携推進部 講師



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大井 文香 Profile
(おおい・ふみか)

徳島大学 産学官連携推進部 助教



研究成果を地域で生かすため、ユニークな取り組みを地道に行っている徳島大学産学官連携部門のレポート第2弾。さまざまな“出会いの場”を仕掛けている。

本学(徳島大学)の産学官連携部門の活動内容について、前号(2010年9月号)で概要を紹介した「技術移転事業」「研究推進事業」「知的財産管理事業」「情報管理・活用事業」のうち2事業について具体例を基に紹介する。

産学官連携事業(技術移転事業)

学内の研究者による発明が特許などに権利化される。こうした研究者および発明などの研究成果を多くの企業等に知ってもらい、企業の技術ニーズとマッチングさせるため、研究報告会、展示会への出展、企業への直接紹介などを行っている。「イノベーション・ジャパン」「nano tech」のような大規模な展示会での紹介のみならず、独自の小規模な催しも仕掛けている。これらの出展においては大小さまざまな工夫を凝らしている。

写真1

写真1 nano tech 2011

大規模な展示会のうち、「nano tech」のような特定分野の展示会を活用する場合、本学のみによる数例の紹介では規模感が十分に出ない。このため、包括協定を結んでいる株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)が、四国5大学(徳島、香川、愛媛、高知、高知工科の各大学)の技術シーズを集約し、統一感を持って出展している。

これまで研究者と来場者との意見交換が十分できなかった反省から、小さな工夫として、研究者が直接展示会場で対応できる時間帯を事前に周知すると同時に、ポップを付けて研究の見どころを明確に示すようにしている(写真1)。これにより企業の反応が良くなり、共同研究につながった事例や現在具体的な研究内容検討を行っている事例が出ている。このような動きの中から大学・企業の連携による研究開発公募事業への提案に至ることもある。

写真2

写真2 徳島大学研究者との集い

また、小規模の研究者紹介の一例として、今年度から「徳島大学研究者との集い」を開催している(写真2)。本学ではぐくまれた技術シーズを、京都・大阪・奈良地域および首都圏の企業、関係団体等に紹介するのが狙いだ。

本学の1,000人余りの研究者によるユニークな研究の全容を、企業関係者に伝えることは容易ではない。そこで、企業関係者が興味のある分野に関して直接、本学の研究者から情報を入手できるような場を定期的に提供している。東京新橋と大阪中之島に開設しているサテライトオフィスで、それぞれ隔月実施を目安に開催している催しだ(表1表2)。本学がこうした情報発信を定常的に行っていることを、各種企業・組織・団体等に認識していただくことが大切なことだと考えている。

表1 「徳島大学研究者との集い」開催概要

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表2 「徳島大学研究者との集い」講演テーマ

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本学は医学部、薬学部、歯学部、工学部、総合科学部を学部教育体制として整え、大学院研究組織としてヘルスバイオサイエンス研究部、ソシオテクノサイエンス研究部、ソシオアーツサイエンス研究部等がある。講演テーマの選定において、これらの組織の縦割りでなく、連携させることで本学の特徴を提示できるようにしている。

産学官連携活動に理解・協力のある研究者たちが、本講演会にて知的財産として形になった研究内容を中心に講演を行っている。生の研究者の講演であるので、日常実験室で起こったよもやま話も講演の中にちりばめて話を進めている。参加者からは当日申し込みのマッチング希望者も多く、Face to Face による情報伝達の確実さ、発展度の高さを実感している。

問題点は講演会参加者の少なさである。どのような経路で周知を行うとより多くの人に来ていただけるか、さらに工夫を重ね、参加者が多いサイエンスカフェ講演会のような催しに成長させていきたいと考えている。

研究推進事業

研究者の研究動向の把握には地道な活動の継続が欠かせない。また、特定の研究者のみの支援では新たな展開も生まれない。このため、本学では研究開発公募事業などを手掛かりに、産学連携部門のスタッフや客員教授・主席研究員が研究者との意見交換を連日行っている。

体制としては、産学官連携推進部が依頼している客員教授13名のうち、企業で研究開発や知財管理に携わった経験のある者4名が担当している。これに加え18名の主席研究員のうち企業OB、科学技術振興機構(JST)の調査員だった者、四国TLO職員計11名も担当している。

JSTで5~6月に募集があった研究成果最適展開支援事業(A-STEP)探索タイプを例に取ると、募集開始と同時に学内の全研究者にメールニュースとして公募の情報を送った。さらに本学に来て間もない研究者に対して個別に電子メールで打診している。

研究者から提案のあった案件については、案件ごとの専門分野により分類し、専門分野に応じたスタッフ、客員教授、主席研究員の担当を決定。提案書を基にした面談等を通じて提案者の状況をまとめている。提案者の状況を見た上で特許性や技術移転の可能性が感じられる案件については、さらに直接面談を行い、評価を行っている。

面談の結果は、発明発掘検討委員会の場で毎月討議する。特許性のある案件については、知財管理事業の中で特許として取り扱うかどうかを決め、取り扱うとした場合は特許出願を行っていくことになる(知財管理事業については次回説明予定)。発明発掘検討委員会の場で、現時点では特許性などがないと判断された案件であっても、今後の経過が期待される案件については、スタッフ等の担当者が適度な間隔を開けて研究者を再度訪問し研究の経過を確認している(図1)。

図1

図1 研究推進事業の進め方