2010年11月号
特集3  - 続 地域金融・新モデル
いわて産学連携推進協議会(リエゾン-I)
企業の新事業創出を後押し
顔写真

猪俣 広志 Profile
(いのまた・ひろし)

株式会社岩手銀行 地域サポート部
情報・ソリューション営業グループ 調査役


岩手県では、新事業創出を目的に岩手銀行など金融機関、大学、高専、研究機関が「いわて産学連携推進協議会(リエゾン-I)」をつくっており、活動を通じて幾つもの成功事例を生み出している。

リエゾン-Ⅰ設立の背景と目的

いわて産学連携推進協議会(リエゾン-Ⅰ)は、大学等研究機関のシーズと企業のニーズとをマッチングさせることにより新事業の創出を図り、地域産業の活性化を目指すことを目的に、平成16年5月に岩手銀行、岩手大学、日本政策投資銀行の3者にて設立した。平成18年には、岩手県内の研究機関や大学、高専が組織に参画し、オール岩手の産学官連携組織となるまでに発展している。

岩手銀行では経営理念の1つを「地域社会の発展に貢献する」としており、地域経済活性化のための取り組みの一環として、リエゾン-Iの活動に積極的に取り組んでいる。

リエゾン-Ⅰの組織(平成22年9月現在)
金融機関(3機関)
岩手銀行(金融機関事務局)、日本政策投資銀行、北日本銀行
研究機関(10機関)
岩手大学(研究機関事務局)、岩手県立大学、岩手医科大学、一関工業高等専門学校、東北農業研究センター、岩手県工業技術センター、岩手県生物工学研究センター、岩手県農業研究センター、岩手県林業技術センター、岩手県水産技術センター

リエゾン-Ⅰの活動
[企業ニーズと研究シーズのマッチング]

リエゾン-Iは産学官連携組織の主な活動として、企業が持つ製品開発等の悩み(ニーズ)と参画研究機関の持つ研究シーズとをつなぐ役割を担っており、金融機関では渉外担当者がソリューション営業の一環として企業のニーズ聴取を行っている。当行の多くの取引先は岩手県内の中小企業であり、その多くは自社に研究開発部門を持つことはできない企業であることから、産学連携による技術力や商品開発力の向上は企業の経営基盤維持に極めて重要と考えられる。昨年は、新たに金融機関渉外担当者の支援ツールとして「リエゾン-Iパンフレット」を制定し、その1面を「相談シート」とした。相談シートは内容を簡記する形とし、金融機関を通じス

ピーディーに企業と研究機関をつなぐ体制としている。

[リエゾン-I研究開発事業化育成資金]

本資金はリエゾン-Iの基幹事業として取り組んでいるものであり、参画する研究機関との共同研究により、「事業の多角化」や「新たなビジネスの創出」を目指す企業に、育成資金を贈呈することを目的にスタートさせた。設立当初は岩手銀行が単独で資金拠出を行ってきたが、組織拡大後は年間2,000万円を上限に金融機関が資金拠出を行っており、これまで7回、延べ36先に合計4,750万円、1社当たり50万円から200万円を贈呈してきた。本資金は、将来性のある事業に取り組む企業に資金を贈呈するものとして、さまざまな目的に活用されている。今年度については1,500万円を上限に贈呈することで準備を進めている。

[リエゾン-Iマッチングフェア]
写真1

写真1 いわて産学官連携フォーラム
    ~リエゾン-Iマッチングフェア2009~

岩手県内最大級の産学官連携のイベントとして毎年開催している。昨年度は11月に「いわて産学官連携フォーラム~リエゾン-Iマッチングフェア2009~」と題し、JSTイノベーションサテライト岩手が主催した「第3回北東北地域イノベーションフォーラム」との共同開催を行い、本県はもとより北東北3県から約250名が参加する盛大なイベントとなった(写真1)。今年度は、11月10日(水)に岩手大学キャンパスで開催した。

[リエゾン-I研究シーズ集の発行]
写真2

       写真2 産学官連携のススメ リエゾン-Ⅰ
           研究シーズ集2010

研究シーズ集は、リエゾン-Iに参画する研究機関のシーズをまとめ平成17年から年1回、計5回発行してきた。昨年度はシーズ集を大幅に改訂しサマリーをポケットサイズに小さくまとめ(写真2)、シーズの詳細は新たに設けたインターネットのホームページに掲載することとした。これにより金融機関渉外行員の機動力アップと企業が求めるシーズの検索機能性を改善することができた。

成果と課題
[リエゾン-I研究開発事業化育成資金贈呈先の事業化事例]
第1回(平成17年6月30日贈呈)
株式会社アイカムス・ラボ
所在地:岩手県盛岡市
事業計画名:マイクロメカニズムの開発
共同研究機関:岩手大学
計画の要約:プラスチックマイクロ歯車を用いた、小型減速装置をコア技術とした、各種マイクロメカニズムとその応用製品開発
贈呈金額:150万円
事業化の状況:大手交換レンズメーカーが「フルタイムマニュアル機構」として採用し製品化

第6回(平成21年2月19日贈呈[1])
有限会社月の輪酒造店
所在他:岩手県紫波郡紫波町
事業計画名:新品種「モチ性ヒエ」を用いた醸造酒の開発
共同研究機関:岩手大学、岩手県工業技術センター
計画の要約:世界で初めて育種されたモチ性ヒエ「長十郎」を用いた新しい醸造酒の開発
贈呈金額:150万円
事業化の状況:贈呈資金を活用して設備投資(酒絞り機)し、製品化が実現。初年度は限定600本を販売

第6回(平成21年2月19日贈呈[2])
株式会社エイワ
所在地:岩手県釜石市
事業計画名:生体用NiフリーCo-Cr-Mo合金等の製造方法の確立と事業化
共同研究機関:岩手県工業技術センター
計画の要約:生体用NiフリーCo-Cr-Mo合金等の製造方法と小ロット溶解・鍛造一貫生産技術の確立
贈呈金額:150万円
事業化の状況:製造方法が確立し事業化。平成22年3月に新工場が竣工

[成果]
オール岩手の研究機関と地域金融機関との本格的な連携組織の実現。
競合関係にある金融機関が、地域貢献の理念を共有し資金提供を行なった。
共同研究成果が、製品化・事業化まで加速していった。また、ベンチャー企業の成長促進にも寄与した。

[課題]
金融機関行員の産学官連携意識のさらなる向上。
研究機関側の産学官連携意識のさらなる向上。
育成資金贈呈企業の事業化に向けたさらなる支援。

これからの展望~成果のより輝く連携システムへ

設立から6年を経過し県内ではリエゾン-Iの活動が徐々に浸透してきたが、今後のさらなるリエゾン-Iの活動の発展のため、次のようなことを展望して活動していきたいと考えている。

より社会・企業のニーズを意識したマッチング、共同研究への支援体制の構築。
研究成果から製品化・産業化に向けたシームレスな支援体制の構築。
隣県や首都圏など他地域との連携に向けた積極的な取り組み。