2010年12月号
特集1  - 知りたい四国
かがわ糖質バイオクラスター
希少糖D-プシコースの製品開発目指す
香川県内の産学官が推進している希少糖の研究開発・事業化を目指すプロジェクトが進展している。研究成果を活用した化粧品、食品などの製品開発、販売が相次いでいる。また、希少糖の1つ、D-プシコースについて量産技術を確立、今春、その卓上甘味料について、消費者庁へ特定保健用食品の申請を行った。プロジェクトに参画した県外企業が、希少糖を使った甘味料工場を建設する計画(香川県内への進出)を表明した。

希少糖の生産方法を確立

希少糖という糖がある。自然界にごくわずかしか存在しない単糖(糖の最少単位)で、これまでに約50種類が確認されている。

香川県内の大学、企業、行政が連携して、希少糖の研究開発・事業化プロジェクトを長年推進しており、そのなかで希少糖の1つ、D-プシコースの量産技術を確立した。香川大学の何森健教授が天然型単糖をD-プシコースに変える酵素を発見したのを契機に研究が開始されたものだった。今や香川大学の「希少糖研究センター」は世界有数の研究拠点となっている。

D-プシコースは希少糖でありながら「食経験」(一般の人が食べた経験)のある糖。甘味は砂糖の70%で、カロリーはほぼゼロ。血糖値の上昇を抑える効果がある。

でん粉の総合メーカー、松谷化学工業株式会社(本社:兵庫県伊丹市)は平成19年6月、香川県内企業3社との共同出資で、D-プシコースを使った食品の企画、開発などを行う合同会社希少糖食品(本社:丸亀市)を設立。22年3月、この合同会社希少糖食品がD-プシコースを使った卓上甘味料「レア スウィート」(商品名)について、消費者庁へ特定保健用食品の申請を行った。

4つの研究テーマ

テーマ1は、高松エリアが世界的にも研究の優位性を持つ希少糖を対象にしたもので、D-プシコースの特定保健用食品の開発を行っている。ここに予算の半分ほどを投入している。テーマ2は免疫調節作用を活用した食品、化粧品、飼料への利用。テーマ3と4は中長期的な課題である。

産学官連携による香川県内の希少糖研究開発は、知的クラスター創成事業を経て、現在、都市エリア産学官連携促進事業(発展型)(事業名は22年度から「地域イノベーションクラスタープログラム(都市エリア型)」)となり、今年度は最終年度。事務局は財団法人かがわ産業支援財団で、「香川県糖質バイオクラスター形成事業」と呼んでいる。

研究テーマは次の4つだ。

1. D-プシコースの生理機能を有する特定保健用食品の開発
2. 地域に根付く糖質素材の免疫調節作用を利用した食品等の開発
3. 希少糖等を用いた医薬品中間体および化成品等の原料の開発
4. 糖鎖機能を応用した新規腫瘍マーカーの開発

成果を活用して相次いで事業化

テーマ2では、これまで研究開発の成果を活用した化粧品や機能性食品の事業化が相次いでいる。22年度に売り出した新製品には次のようなものがある。

海洋微生物由来のウミノグリカンを配合した美容液(有限会社シーバイオン)
植物由来のパントエア菌の糖脂質(LPS)から生まれた保湿クリーム(自然免疫応用技研株式会社)等
海藻のグルコオリゴ糖を添加した食品=「生姜しじみだし醤油」など3品目(宝食品株式会社)

株式会社レアスウィートが販売へ

「甘味料D-プシコース」を「食後の血糖値が気になる方」用としてトクホの申請にこぎ着けたことで、主力のD-プシコース分野でも研究開発と地域産業振興を本格的に結び付ける時期に入った。県内の企業にもっと希少糖に関心を持ってもらうため、D-プシコースの物性、味、利用の仕方などを解説したガイドブックをつくっている。こうした活動により、産業集積を図っていきたい。

一方、経済産業省「地域イノベーション創出研究開発事業」の支援を得て、D-プシコースを含有した異性化糖の生産技術についての研究が進められている。その成果を活用して、松谷化学工業は10月末、香川県宇多津町の「番の州臨海工業団地」に、希少糖を使った甘味料工場を建設する計画を明らかにした。詳細は未定だが、2011年度中に建設し、早ければ同年度中に発売したい意向のようだ。

写真1

写真1 希少糖含有異性化糖サンプル



写真2

写真2 希少糖(D-プシコース)



関係者は、D-プシコース関連の製品は、株式会社レアスウィート(本社:香川県三木町)を通じて販売するというビジネスモデルを描いている。同社は今年3月末、松谷化学工業、合同会社希少糖生産技術研究所、合同会社希少糖食品の3社が出資して設立した販売会社だ。このうち合同会社希少糖生産技術研究所は香川大学発のベンチャー企業で、代表社員は元学長の近藤浩二氏である。

松谷化学工業が香川県内に建設予定の工場でつくることを予定している希少糖を使った甘味料は液糖(液体の糖、写真1)で、これを株式会社レアスウィートに供給する。株式会社レアスウィートは純度100%の粉末のD-プシコース(写真2)も扱うが、これを生産するのが合同会社希少糖生産技術研究所だ。

かがわ産業支援財団は法人、個人を対象とした会員組織「かがわ糖質バイオフォーラム」(20年12月設立)を通じて、同プロジェクトの成果を活用して新事業、新産業創出のためのPR活動を行っている。

(登坂 和洋:本誌編集長)