2010年12月号
特集2  - 第2回イノベーションコーディネータ表彰
イノベーションコーディネータ賞・科学技術振興機構理事長賞 田中一郎氏
地域からのイノベーションを目指して
顔写真

田中 一郎 Profile
(たなか・いちろう)

帯広畜産大学 地域連携推進センター
産学官連携コーディネーター


●受賞理由
産業の集積が弱い地域で、地元産業・大豆と結び付けた新事業化に成功。企業ニーズに対応して技術相談から販売までワンストップサービスする支援体制を構築した点は高く評価できる。

帯広畜産大学が存在する北海道十勝地方は、農業に加え、食品加工産業が集積しつつある食料生産地域である。この地域にも国際化の波は、時に漣(さざなみ)のごとく押し寄せるが、今回の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の問題はまさしく津波のようである。農業団体等は、農業のこれからと食糧確保に向けた課題が解決されないと受け入れ難いと、反対の論陣を張っている。一方、産業界はこのチャンスを逃すと日本の産業は競争力を失い、経済も雇用も立ち行かなくなると指摘している。国家戦略も含めて議論は続くであろうが、忘れてならないのは、農業はいかなる経済環境下においても国民のサイド、地域の視点で考えることである。

十勝は、農業と連携した食品加工産業を発展させることが重要であり、産学官連携によるイノベーションがその原動力となるべきである。イノベーションを難しくとらえるのではなく、今よりも良くなればよしとするおおらかな気持ちで推進することである。産学官連携は周辺の「知」を活用してイノベーションを達成するための手段であり、誰でもいつでも利用可能な柔軟な組織連合である。産学連携は、個々では困難な課題を解決するために必要であり、コーディネータに求められているのは、組織と組織をつなぎ共通の目的、目標を達成すること。コーディネータにはヒエラルキーのリーダーシップは役に立たず、横のつながりにおけるリーダーの能力が不可欠である。

発酵、小麦粉、新エネルギーに注目

十勝地域のイノベーションのフォーカスは、「発酵」「小麦粉」「新エネルギー」である。発酵は、伝統的な納豆からバイオエタノールまで時空を超えた十勝型加工産業の技術である。小麦は十勝で品種開発から製粉、そしてこれを使用した各種の食品まで幅広く利活用が可能である。新エネルギーは、バイオマスの利用により農業のエネルギー産業化への道を切り開く。これらの3テーマは相互作用とシナジー効果が得られる。

産学官連携はまだ発展途上である。個々の持てる能力を結集して横のリーダーシップを発揮し、地域からのイノベーションを目指したい。