2010年12月号
特集2  - 第2回イノベーションコーディネータ表彰
イノベーションコーディネータ賞・奨励賞
江上美芽氏
レゾナンス・プロデューサー
顔写真

江上 美芽 Profile
(えがみ・みめ)

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所
客員教授、チーフメディカルイノベーション
オフィサー
(国際産学連携・知財戦略コーディネーター)

●受賞理由
「再生医療の本格化に向けた最先端技術融合拠点の形成」を、産学連携活動で短期間に実現。国際的なイニシアチブを獲得すべく、受賞者のリードの下で早期に国際連携フレームを構築しており、グローバル化に腐心している。

私の所属する東京女子医科大学先端生命医科学研究所は、「細胞シート工学」という独自の細胞組織構築技術による再生医療の実現を目指し、基礎から臨床研究までの医理工分野先端研究者と医師、そして産業研究者が融合して、産業化に耐えうる治療と関連技術開発を展開する、世界でも有数の再生医療研究拠点である。

患者等の細胞(ES/iPS細胞含む)を加工培養し、血管網を含む健全な組織を構築して患者体内に戻す治療プロセスは、バイオ医薬品や医療機器のように既存の商流や産業モデルに乗せて製品化することができない。世界から待望され高齢化社会に必須の「根治再生医療」である一方、現在の医療産業には革命的存在であり、その普及には医師・病院と産業が連帯して新たな治療インフラをつくり出すことが必要である。さまざまな障害を克服して画期的な再生医療を実用化し、国際普及と産業化によってメディカルイノベーションに結実させるには、知財・契約・広報等の個別専門担当者がばらばらに研究者を支援する現在の体制構想ではらちが明かない。

世界のイノベーション創出と連動

産官学の産業化関係者や社会に対して、産業構想や実現化社会の姿を示す啓発活動を主体的に担当し、制度設計の促進活動により産業育成に連結させるコーディネータ、ならびに国際連携ネットワークを構築して国際薬事ガイドライン、標準仕様、国際貢献等の決定コアメンバーとなり、世界のイノベーション創出と連動させるレゾナンス(共鳴)プロデューサーの貢献が欠かせない。未来の標準治療の根幹と言うべき研究者集団の珠玉作品を既存の管理体制や売り上げ規模第一主義から守り、その実現を支える社会制度と環境を同時開発することにこそコーディネータの存在意義がある。それは傑出した映画監督と渾身(こんしん)の演技俳優群が生み出した、世にもまれな傑作映画を大衆商業主義からお蔵入りさせることなく世に出し、社会のライフスタイルまで影響を与えるプロデューサーと同じである。

私の産学・国際連携活動や国内外での講演・執筆活動は、こうした使命感により道なき道を模索しつつ築いてきたものである。今回の受賞が、若いコーディネータ諸氏が今の役割から一歩も二歩も踏み出して、新たな力強いプロデューサーモデル構築を工夫する一助となれば幸いである。