2011年1月号
単発記事
産学連携による杭頭の動的破砕処理工法の開発
顔写真

中村 裕一 Profile
(なかむら・ゆういち)

熊本高等専門学校
建築社会デザイン工学科 教授


ここに報告する産学連携による技術開発の取り組みの端緒は、杭頭の動的破砕処理のための装薬ホルダーの有効性を高等専門学校(高専)と企業の研究者が協議したことにある。高専と企業との共同研究成果を核にした建設新技術として、杭頭処理のための施工技術開発を目指した取り組みについて紹介する。

杭頭の動的破砕処理技術の必要性

近年、市街地での騒音規制等により、現場打ちコンクリート杭が主流となっている。現場打ちコンクリート杭の特性上、杭頭処理作業が必要となるが、杭径が1~2.5m程度の大口径杭では杭頭部のコンクリート処理量が多く、ブレーカーによる解体が必要となり、近隣に対する騒音・振動問題の長期化や、多大な人力を必要とする等の問題が発生している。そのため、杭頭処理を迅速に行うことのできる動的破砕処理工法の確立が求められている。この動的破砕処理工法とは、少薬量の火薬類を装填した簡易装薬ホルダーを使用して、鉛直方向の亀裂を制御すると同時に、杭頭処理部分と杭健全部との境界面に沿う水平方向の亀裂制御を実現するための工法である。  

取り組みの経過と基礎研究成果

平成16年2月、五洋建設株式会社からの申し出を受けて、前述のような意図のもとに、建設新技術の開発を目指した調査・研究を共同で開始し、それを踏まえて平成16年11月より、五洋建設からの受託研究を高専で開始した。この技術開発のための基礎研究では、杭頭処理のための簡易装薬ホルダーの有効性を確認するために、コンクリート柱状試験体(φ200×400)を使用したモデル実験を行った。この簡易装薬ホルダーでは、薄い鋼板を曲げ加工したものを2枚突き合わせて、ひし形のような断面形状としている。また、実施工との関係から、杭頭処理における鉄筋かごの縁切り効果も確認した。簡易装薬ホルダーと水平仕切り板、鉄筋かごを組み合わせた場合には、柱状試験体上部の効果的な動的破砕処理が実現できる。受託研究開始前の共同研究の成果をもとに、五洋建設と独立行政法人国立高等専門学校機構の共同による特許出願も行い、平成21年1月には、本工法は特許査定を受けている(特許第4245614号)。  

実用化を目指した取り組み

高専における本工法の有効性を検証するためのモデル実験の成果をもとに、新たに、独立行政法人産業技術総合研究所、旭化成ケミカルズ株式会社、日本化薬株式会社、カヤク・ジャパン株式会社と連携して共同研究契約を締結し、装薬にコンクリート破砕器(CCR)を使用した杭頭の動的破砕処理技術の実用化を目指した取り組みを行い、実規模実験によって、実用化技術としての本方法の有効性を確認している。仕上げのためのはつり作業は短時間で行うことが可能となり、仕切り板下部の杭の健全度はコンクリートコアを抜き取って評価した。  

現場適用可能な施工技術とするための取り組み

地上構造物を建設するための現場打ちコンクリート杭の必要性と、その場合の杭頭処理作業の負担を考えると、ここに紹介した杭頭の動的破砕処理工法開発の意義は大きいと考えられる。建築工事において、従来方法に替えて新技術を現場適用するには、第三者機関による技術認証を受けておくことが望まれる。このため、五洋建設では、実施工への適用を想定した現場実証実験を行っている。写真12は、破砕処理前後の杭の状況を示している。本工法の適用によって、精度よく、良好な破砕処理効果が得られる。五洋建設が申請した「動的破砕杭頭処理工法(DFP工法)」は、平成22年6月1日付けで、財団法人日本建築総合試験所より、建築技術性能証明(第10-06号)を取得している。今後は、杭頭の動的破砕処理を専門に行う工事業者との実施許諾契約の締結を進め、現場施工技術として普及させていくことになる。  

写真1

写真1 破砕処理前の杭頭部

写真2

写真2 破砕処理後の状況