2011年1月号
編集後記

本号の遠藤章博士へのインタビューは興味深い。同じ研究分野で、博士の背中を追いながら憑かれたように活性物質を追い求めていた日々が、昨日のことのように蘇る。そんな経験を通して蓄えた知識や経験知を社会に還元する機会が与えられた。自治体の産学連携支援の一環として、バイオ入門講座の講師を務めたのだ。4回、全12時間。バイオ関連分野で活動していながら体系的に「バイオ」を学ぶ機会に恵まれず、知識不足を感じている方々が対象だ。新成長戦略が始動し、バイオ分野で産と学をつなぐ人材の重要性はますます高まるだろう。入門講座の狙いは、こうした方々に密やかな学びの時と場を提供することだ。受講者の評価は上々だったと聞いた。

(編集委員・谷田 清一)

鈴木章、根岸英一両博士がノーベル化学賞を受賞されるなど、2010年も日本の科学にとって素晴らしい1年であった。技術分野でも、私の「日本発のイノベーション」リストに、垂直磁気記録ハードディスクなど、世界をリードする項目をいくつも加えることができた。一方で、「日本人初のノーベル経済学賞」はなお未達成のままだ。相変わらず「実経済と経済学は違う」という言い訳しか聞こえてこないが、もしノーベル経済学者が1人でもいたら、現代日本に蔓延する「その場限りの経済政策」は少しは影をひそめるのではないか、とも思う。科学としての経済学を創造するために、これまでとは違った「官」の支援があってよいのではないか。経済学に立った産学連携の意味付けも欲しい。

(編集委員・松尾 義之)

大学の産学官連携にとって、2010年の大きな話題は「自立的な取り組み」が求められるようになったこと。関連して「世界的研究・教育拠点」「地域の生涯学習機会の拠点」など大学の機能分化の重要性が改めて指摘された。今後は国の支援に過度に依存しない、持続可能なシステムを構築せよということだ。無論、自立化とは、支出に見合う収入を得るといったことではない。自らの大学の「機能」を自覚し、独自の戦略を持つことが前提だが、これまでの何倍も社会貢献・産学官連携部門にコストをかける大学も出てくるだろう。持続可能なシステムづくりは、当の大学界にとっても、社会にとっても素晴らしいことである。本誌は、こうした動きを探っていきたい。本年もよろしくお願い致します。

(編集長・登坂 和洋)