2011年3月号
特集1  - 経営者に応えるコーディネート術
再生ゴムからボラード(車どめ)
顔写真

小森 幹雄 Profile
(こもり・みきお)

日本大学 産官学連携知財センター
コーディネーター


廃タイヤ処理業は、タイヤを切断し燃料として利用する。この事業の将来性を憂慮し、廃タイヤを活用した自社製品を開発したいと、中小企業経営者が日本大学に相談した。漠然とした願望だったが、大学側がこれに応え、新製品を共同開発した。

自社製品を開発したい

3年前、廃タイヤの再生ゴムリサイクル業の株式会社グリーンエレメンツ(埼玉県入間市)代表取締役小橋克史氏は、母校である日本大学芸術学部を訪れた。この事業の将来性を憂慮し、漠然としているが何か自社製品の開発を行いたいとの思いがあったからだ。従来の廃タイヤ処理事業は、燃料として再利用を行うためにタイヤの切断などにコストがかかっていた。小橋氏は、環境問題も考慮し、廃タイヤの新たな有効利用への強い思いがあった。

通常、こうした漠然としたニーズだけでは、研究者の協力はなかなか得られないが、このケースでは、デザイン学科の肥田不二夫教授に熱心に対応していただいた。

日大芸術学部と共同研究

「再生ゴム(廃タイヤ)を使った新デザイン提案」をテーマに、同社と日本大学芸術学部デザイン学科のインダストリアルデザイン研究室との共同研究が始まった。肥田先生を中心に、清水敏成教授や土田修教授のご指導も加わった。

スポーツ用品、家庭用品、運動具、公園遊具など100を超えるアイデアが出た。しかし、再生ゴムの利用量がどれも少なく今一歩であった。量の出る建材関係も検討されたが、デザイン性が生かされないことで断念した。そうした中から選ばれたのが、「ボラード(車止め)」であった。

図1

図1 ボラードについて

このボラードの可能性の有無を確認する場となったのが、デザイン学科伝統の「軽井沢セミナー」であった。本セミナーは1~4年の学生が参加、2泊3日による合宿授業である。30年以上続いている。「再生ゴムによるボラード(車止め)」をテーマに、材料、都市景観、リサイクル、環境、デザインなどさまざまな切り口から検討され、最終的に1つの可能性を示す作品を優秀作として選定した。

写真1

写真1 再生ゴム(廃タイヤ)を使った
    ボラード

その後、小橋氏、肥田先生などの教授陣、大学院生により製品化に向けた共同研究が始まり、さらにブラッシュアップされていった(図1)。小橋氏から現場を調査した情報が寄せられ、細部にわたる機構・部品、クッション性、ブロック化、回転するアイデア、継手部等多くの課題を解決し、製品が完成した(写真1)。


この製品の特徴は以下のようなものである。

ゴム製円筒形のパーツを組み立て機構にすることにより、街の景観に対応し、接触物およびボラードに対する衝撃吸収・損傷軽減などの特徴がある。

1.景観対応: パーツの組み換えによりバリエーションが豊富
2.衝撃吸収: ゴム円筒部を中空状にすることにより変形させて衝撃を緩和
3.損傷軽減: 車両が接触した際にゴム円筒部が回転し損傷を軽減

NUBICで知財化支援

2008年、知的財産化を図るため日本大学産官学連携知財センター(NUBIC)に協力の要請があった。研究成果の知財化支援や企業との契約交渉等を行うのがNUBICコーディネーターである。早速、コーディネーターが肥田先生と検討を重ねた。当初、意匠出願を検討したが、さらに強い権利化を図るため特許性を高め特許出願することとなった。日本大学では職務発明があった場合、研究者から発明届を提出していただき、大学内の審査専門委員会にて大学が出願する権利を継承するか審査される。今回も手続きが行われ、事業化を積極的に進めるために早期審査の手続きを行い、審査の結果特許登録に至った(特許第4613297号)。

事業化への後押し

株式会社グリーンエレメンツでは、さらに製品化に向けて研究が行われた。小橋氏は、営業活動を開始するとともに展示会等へも積極的に出展をした。「2008NEW環境展」では、「景観対応型・衝撃吸収・損傷軽減ボラード(進入防止杭・柵)」として出展した。NUBICが出展する展示会においても試作品とともに紹介し、徐々に問い合わせが増えていった。

これまでの施工実績は、日本大学の桜門会館前駐車場、芸術学部江古田校舎の多目的スペース内のほか、西多摩郡瑞穂町の公園などがある。

今回の産学連携がスムーズに展開されたのは、次のような要因によると思われる。

当初企業ニーズは漠然としていたが、その担当者が熱心であったこと。
大学側の担当教授がきめ細かく対応したこと。
研究成果をスピーディーに知的財産化が図れたこと。
特許出願後も、製品化やビジネス展開等の相談に対応したこと。
大学の研究成果を出展するイベントで広報したこと。