2011年12月号
特集 - 市街地対策・まちづくり 学の貢献
筑後川流域圏地域づくりなんでも相談会
~久留米大学経済学部の地域連携~
顔写真

駄田井 正 Profile
(だだい・ただし)

久留米大学 経済学部 教授/
NPO法人 筑後川流域連携倶楽部
理事長

各地の大学が取り組んでいる地域貢献。経済学部の強みは、いろいろな人々を結び付けるネットワークづくりだ。久留米大学では、テーマを出し、住民に参加を呼び掛け、チームで課題解決に臨む。1つのプロジェクトでは、学生のインターンシップとしてカリキュラムを加えている。

地域のニーズに立脚したなんでも相談会
写真1 「筑後川流域圏地域づくりなんでも相談会」パンフレット

写真1 「筑後川流域圏地域づくりなんでも相談会」パンフレット

経済学部は、理工系の学部と違って、企業と連携して商品化できるような技術を持っていない。経済学部は現実の経済現象を解明し、経済状況の改善に導く政策手段の研究に携わっているが、個別的企業との具体的連携となると不思議につながらない。提供できる具体的技術がないという事情があるので、仕方のないことかも知れない。J.M.ケインズが言ったように、経済学は物理学などに比べて専門的でなく平易であるが、学問領域を超えた幅広い知識の集約を必要としている。この特色から考えると、いろいろな分野の人々を結び付けるネットワークづくりには適している。言い換えれば、自ら持つシーズを売り出すのではなく、それぞれの人々や地域が抱えているニーズを引き出し、そのニーズを実現するためのネットワークづくりを担うということである。このことから発足したのが、久留米大学経済学部の「筑後川流域圏地域づくりなんでも相談会」である(写真1)。

この相談会は、筑後川流域圏のいろいろな人々に働き掛けて、「このゆびとーまれ方式」で問題の解決を図ろうとするものである。この方式では、
   Step 1 問題・テーマを出し合い、集まる
   Step 2 テーマを出した人がこの指をたてる
   Step 3 外部の人にも呼び掛け、人数を増やし、チームをつくる
の3つの段階を経て、提案されたアイデアの実現を図っていくものである。

今まで提案されたもので、主に実現されたのは次のものである。

現代若衆宿

これは、久留米市で飲食店を営む若手の実業家らの提案である。若い人、特に学生と勉強会を開いて互いに切磋琢磨(せっさたくま)しようとするものである。経済学部の立場からも、学生が教室での座学ばかりでなく、実際に事業を経営している人たちと一緒に現場に則した勉強ができることは望ましいと判断した。それで、この提案を6カ月間のインターンシップ(16単位)としてカリキュラムに加えた。

薬物依存問題解決

これは、実際に子息が薬物依存で悩んでいる人からの相談から発足したプロジェクトである。シンナーや覚せい剤中毒者をどう更生させるかについて、福祉・心理などの専門家、医師、保護司、警察官などの関連する諸方面から集まって研究会が発足した。研究会を重ねるうちに、この研究会は思わぬ方向に発展した。

子どもたちが薬物に手を出さなくするには、子育てについての地域の連携が必要であるということから、大学を中心にして地域の子育てネットワークづくりをしようということになった。その一環として、「ゆにば広場」という祭りイベントを大学のキャンパスで開催されるようになった。今年、3回目が開催された。さらに、この研究会を通じて形成されたネットワークが発展し、今年NPO法人の資格を取り、いよいよ活動が本格化する方向にある。

ネコメ洞

中心市街地の活性化はどの自治体にとっても課題であるが、なかなか決め手がないようである。特にシャッター街という別名がつけられる商店街の不振は甚だしい。それで提案されたのが「ネコメ洞」である。商店街を単なる「物売り」の場とするのではなく、かつてあったと思われる「人々の交流の場」の要素を加えて再生しようという発想である。

「ネコメ洞」は誰でもが気軽に参加できる一種のサロンである。人々が食事や酒を酌み交わしながら会話を楽しみ交流しようというものである。このような交流の中から中心街を活性化するアイデアも生まれ、情報も共有できる。ネコメは猫の目のようにいろいろな人が入れ替わり訪れてくるという意味である。

写真2 「かっぱ洞」サロンでの交流の様子

写真2 「かっぱ洞」サロンでの交流の様子

この提案は、「交流いちば・かっぱ洞」(写真2)として久留米西鉄2番街に実現し、今年で2年目を迎える。かっぱ洞では、普段の営業の他に「歌声喫茶」や、ちょっとした勉強会などさまざまな催しもあり、いろいろな人が訪れ交流の場となっている。また、かっぱ洞は地域通貨「カッパマネー」の両替所の役割も果たしている。カッパマネーは筑後川流域約80の協力店で流通し、その運用によって得られた余剰でボランティア活動を支援している。

「なんでも相談会」では、生ゴミ処理機の共同利用、地域通貨と連携したNPO銀行、ことづけ「モノ」配送システム、筑後川ブランドづくりなどユニークな提案がなされている。これらの提案もこのネットワークの中で、実現されていくことに期待したい。