2011年12月号
特集 - 市街地対策・まちづくり 学の貢献
仙台市・サンモール一番町商店街
地元大学と商店主、まちづくり関係者の連携
顔写真

柳井 雅也 Profile
(やない・まさや)

東北学院大学 教養学部
地域構想学科 教授


仙台市のサンモール一番町商店街はJリーグのベガルタ仙台や地域の多くの大学を活用して活性化に取り組んでいる。横町めぐりツアーの企画、新名物料理の開発、公衆トイレリフォーム、「井戸端」復活プロジェクトなどさまざまなところで学生が大活躍だ。

はじめに
図1 仙台市中心商店街とサンモール一番町商店街の位置

図1 仙台市中心商店街とサンモール一番町商店街の位置

宮城県仙台市のサンモール一番町商店街は南北に伸びる一番町商店街の南端にある(図1)。戦後、露天商が集まって「中央公設市場」(現在の壱弐参横丁:壱弐参は「いろは」と読む)ができ、近くに東北大学や東北学院大学があったことから、映画館、本屋、楽器屋、レコード店、スポーツ用品店、飲み屋等でにぎわっていた。

しかし、東北大学は教養部やサークル棟が仙台市西部の川内キャンパスに移り、東北学院大学も教養部が泉キャンパスに移転すると、映画館やレコード店等は廃業または移転してしまった。歩行者も平日で1万8千人(2011年)と、10年前の比較で30%減少した。大型店舗だった丸善書店跡地は駐車場になり、空き店舗も2011年現在5店舗ある。商店街の魅力が低下してきた。

サンモール商店街の魅力

それでも、新しく輝きだした魅力もある。例えば、サンモールのアーケード街では週4回、マルシェ・ジャポンが開催され新鮮野菜等の販売が始まった。2010年実績で来街者92万人、売上1億5千万円を記録し、集客と売上効果が確認されている。また、壱弐参横丁は家賃が比較的安いことから若者等の起業もみられ、昭和レトロなお店や、若者向けの雑貨屋等も増えてきた。文化横町でも老舗の中華店や洋食屋、瀟洒(しょうしゃ)な飲食店が並びサラリーマンや若者が訪れている。

また、東北大学片平キャンパスでは研究所に外国人研究者や留学生が増え、それに合わせてアイリッシュパブや旅行会社等がオープンしている。さらに2015年度開業予定の仙台市地下鉄東西線の一番町駅が「サンモール一番町商店街」と青葉通りとの交差点地下に設置され、それに直結して、商業施設、医療・福祉サービス、マンションが入った22階建ての複合施設ができる等、新たな街の魅力が創出されようとしている。

変化の胎動

このような変化をうまく利用して街の活性化を進めようという取り組みが始まっている。これはまちなか再生支援法人仙台エリアマーク事業協同組合(代表理事:松本真明氏、以下「エリアマーク」)がコーディネータ役となって、Jリーグのベガルタ仙台や大学の力をうまく活用しながら壱弐参横丁を活性化しようというものである。ちなみに、この組合は土地開発、建築、商品企画、印刷関連の企業や人が結成した組織で、まちなかの再生支援をする体制が整っていることで知られている。

写真1 井戸の洗い場には愛嬌のある“ゆるキャラ”の竜神

写真1 井戸の洗い場には愛嬌のある“ゆるキャラ”の竜神

この組合メンバーの高橋雄志氏(まちづくりプランナー)は、2009年に「いろは横丁活性化実行委員会」を起こし、2010年に初めての企画「~祝どんと祭~いろは横丁の小正月」を行った。ここに東北文化学園大学、東北学院大学、東北大学、宮城教育大学等の先生や学生が参加し、チラシのデザインや横丁めぐりミステリーツアーの企画、新名物いろは汁開発、餅つき大会等を立案し実行した。また、公衆トイレのリフォームでは宮城教育大学の学生等が手伝いをした。また井戸端の復活を図るため東北工業大学ライフデザイン学部の学生が話し合いを重ねてイメージを形にし、縁台や板塀の製作、昭和レトロな外灯の設置、井戸の洗い場の整備を行った(写真1)。このような成果を上げたところで、エリアマークは大学との連携ノウハウをサンモール全体に展開することになった。

「実感」のある商店街活性化へ
図2 サンモール一番町ふれあいビレッジ実行委員会の体制

図2 サンモール一番町ふれあいビレッジ実行委員会の体制

サンモール一番町商店街は、中小商業活力向上事業(経済産業省:2011~2015年度)を受託した。これは、来街者を増やすイベントを展開しつつアーケードを改修する計画(サンモール一番町ふれあいビレッジ事業)で、振興組合とエリアマークが主体となって、そこに大学等が協力する体制となっている(図2)。

写真2 「ぶらサンモ」の様子

写真2 「ぶらサンモ」の様子

例えば、野中神社やミツバチプロジェクト等、商店街の魅力を探訪する「ぶらサンモ」企画に大学の先生や学生たちが協力している(写真2)。「みちのく酒の駅」の企画では東北工業大学が協力し、被災した酒蔵の復興映像を、建設中の再開発ビルの囲い塀を利用して投影し注目を集めた。また「留学生・在仙外国人のためのサンモール国際派商店めぐり」「マルシェ・ジャポンセンダイ井戸端会議」でも、大学の先生や学生が関わっている。

商店街活性化に関わる大学の力

事業が比較的うまくいっているのは、エリアマークが大学と地域商店街との間に立ち、両者の通訳と提案者としての役割を果たしているためである。これによって、大学の先生は、より専門的なアドバイスや活動に集中できるようになった。また、学生もそれに合わせてアイデアやマンパワーを発揮しやすくなった。さらに、1つのプロジェクトに複数の大学が参加することも可能になった。大学が全てを仕切る場合、ともすれば独りよがりで机上の空論を展開するケースがみられるが、この組織体制ではその弊害が極力排除されている。

いずれにしても、大学の力が最大限に活かせるような体制作りを、よく考えることが重要であるといえる。