2011年12月号
特集 - 市街地対策・まちづくり 学の貢献
「まちなか研究室」へのインターンシップ、登録制度の提案
―まちづくりの担い手をいかにU ターンさせるか―
顔写真

矢部 拓也 Profile
(やべ・たくや)

徳島大学大学院 ソシオ・アーツ・
アンド・サイエンス研究部
准教授/NPO法人 まちづくり
役場 理事

全国各地の商店街で、地元の大学の教員・学生が、「まちなか研究室」などさまざまな活動を行っている。しかし、ごく一部の例外を除き、そこで学び、活動する学生が、卒業後、そこの商店主になり、まちづくりに取り組むわけではない。「大学とまちづくり」というテーマを考える場合、「地元出身で外部の大学に行っている学生」への視点が欠けている。そこで、「まちなか研究室」をまちづくりの新しい担い手育成の場として活用する方法を提案する。

地方都市のまちづくりに10 年余り

私は、1999年、東京都立大学(現・首都大学東京)大学院(社会学専攻)の博士課程時代に、滋賀県長浜市の『黒壁』を中心とするまちづくり活動への参与観察を始めた。徳島大学に赴任する2003年まで、毎月1週間程度長浜に滞在し、「まちづくり役場」の活動を手伝いながらメンバーとして参画してきた。現在は、年に数日しか行けなくなったが、理事として継続的に長浜のまちづくりに関わっている。徳島大学赴任後は、徳島の「銀座」商店街に居を構え、商店街のイベントやNPO活動に参加しながら活動している。また、昨年度は一般社団法人「まちづくり役場とくしま」を立ち上げ、商店街内の空き店舗を活用する「まちなかキャンパス」事業(徳島市委託事業)を行っている。

私の場合、「大学」というよりは、大学院生・大学人「個人」として地域(町場・マチバ)に入ってゆくことが多いが、気が付くと10年以上も地方都市の中心市街地活性化・「まちづくり」に関わっている。これまでの経験を振り返りつつ、地方の商店街の活性化と大学の関わりについていつも悩んでいること、および、(自分も含めた)「まちなか研究室」のように大学が商店街に拠点を持つ場合の有効な活用の提案を行いたいと考えている。


●まちづくりの矛盾:商店街にオフィスを構える「まちなか研究室」は、地元のまちづくりの担い手を育成しているか?(在学中、商店街に集いまちづくり活動をしている学生の多くは、卒業後、商店主にはならない)
 商店街の活性化を考える場合、そのまちづくりの担い手の中心は商業主である。大学の機能の1つは人材育成であり、「地元」商店街の活性化を行うのであれば、理想としては、卒業生に地元中心市街地商店街のまちづくりの担い手の1人になって欲しい。しかし、現状はどうだろう? 在学中、商店街のイベントに関わった学生が、卒業後、商店主になり、まちづくりをする人材になるかと問われると、残念ながらNoと言わざるを得ない。

町場(マチバ)でまちづくり活動をしている人たちの多くの共通した見解は、コンサルタントや行政職員のように計画や評論ばかりする人はいらず、実際に現場で活動する町場の人間が大事だと言う。商店街活性化に関心を持つ大学人もそのようなマチバの意見に共感して「まちなか研究室」を商店街に設け、現場に学生を送り込み、商店街や地域とイベントなどさまざまな実践をし、マチバの考えを共有してゆく。しかし、これはジモトのまちづくりの担い手育成のための実践とはならない。大学時代に培ったまちづくりの「経験」は、就職活動において自分がなりたい職業を得るためのエピソードとして消費されることが多い。しかも、マチバが言う、行政職員やコンサルタントになる(志望の)学生が多いという矛盾。

考えてみれば当然だが、自分が商業主の後継者でない限り、商業主になりたいと思って大学に来る学生は少ない。実際の商業主のキャリアはといえば、地元なら、(商業)高校出身者、大卒であれば、地元大学よりも、地域外の大学出身者が多い。特別な場合を除いて、地元の大学に進学することはまれである。

「まちなか研究室」での活動は、在学中の大学生を衰退する商店街に労働力として動員する役割は果たすが、長期的な地元のまちづくりの担い手育成には寄与しにくい構造を持っている。本気で、ジモトのまちづくりの担い手育成をするのであれば、自分たちの学生以外をネットワーク化するしかないとも言える。


●提案:外部に存在しているジモトまちづくりの担い手候補者の入口としての「まちなか研究室」・ジモト出身者登録制度(Uターン社会人が集う場、地域外に出て行った大学生が帰郷の際に立ち寄るジモト「大学」、まちづくりに関心のある人が誰でも立ち寄れる場)
 地元大学の在校生は確かにまちづくりの担い手ではあるのだが、それは在学期間中という一時的な担い手に過ぎない。恒常的なまちづくりの担い手育成をも同時に行わなくては、中心市街地を活性化させるという「地域貢献」の真の目標は達成されない。現状、長期的に携わる人材は、担当する教員個人だが、それだけでは衰退する商店街を再生させる社会的な仕組みにはならない。

そこで、私が提案したいのは、①各大学における「まちなか研究室」に関わる学生たちの出身地にある「まちなか研究室」へのインターンシップ、および登録制度である。地方国立大学の特徴として、出身地への就職志向(特に公務員志向)が強いことがある。まちづくり担い手論から考えると、「今」だけを見れば地元大学の在学生を担い手として考えることは有効であるが、長期的に見れば、Uターンしてジモトに就職する現在他地域の大学生こそが、実は、ジモトのまちづくりの中心的な担い手候補者である。もちろん、他地域の「まちづくり」を経験することも重要であるが、最終的な活躍の場はジモトである。早いうちから、現状を知り、長期休業などを利用しジモトでまちづくりインターンシップを行い、自分が戻ってきた際の足場づくりをすることは、継続的なまちづくりの担い手育成を考える上で重要かつ基本的な仕組みづくりではないだろうか?

また、応用編として、②現在県外で就職しているジモト出身者が戻る際の、足場づくりとしての「まちなか研究室」(メンバー登録とインターンシップ制度)。地元に戻ろうにも、とっかかりが無いと感じている地域外居住者は意外に多い。また、そのような方は、出身地のまちづくりへの関心も高い。彼らに、休日の数日でも、まちづくり活動に参加してもらい、故郷への愛着がより深くなれば、何らかの職を探してジモトに戻ってきてもらうきっかけになろう。また、場合によっては、そこから職が見つかるかもしれない。大都市と比べると、地方の場合、どうしても給料などの経済的所得は減少することが多いが、人生の楽しみとしてのまちづくりがあることで、その一部を埋め合わせることは可能である。また、彼らの外部の視点が、これまであまり評価されていなかった地域の魅力を再発見させる可能性も大きく、まちづくりの大きな力になると期待できる。

外部から情報・資源を取り入れる

●まとめ:徳島大学だから徳島の商店街を応援するのが地域貢献?
 ある産官学連携の関係者から、産官学の3つのうち、地元企業(産)と行政(官)は地元から離れられないが、「学」は地域から離れて活動できるから違うと、産官から大学について不満を言われることが多いと聞いた。現在は地元企業でも海外進出する時代なので、必ずしも産が地域に縛られているわけではないが、理念型としては理解できる。学生が卒業後、必ずしも大学の所在地に残らないのもこの特徴の1つであるし、大学の研究の題材が必ずしも大学の所在地域にあるとも限らない。むしろ、多くの研究者は地元以外をフィールドとして研究している。

逆に言えば、地元に必要な知識は地元以外の大学が持っているかもしれない。地域貢献を狭く捉え、衰退する商店街への人的資源動員の源泉としてのみ大学を捉えるのであれば、近接性のある地元大学が重要であるが、事の本質に立ち返り、当該地域の社会問題解決として考えるのであれば、「まちなか研究室」を通じ、世界中の関係する資源をネットワーク化し、外部から重要な情報・資源を取り入れ、新しい仕組みをつくる方が、「学」として果たすべき役割なのではないだろうか。また、卒業生が就職後の他地域でも「まちづくり」を継続して行うような仕組みづくりこそが、人材育成機能を持つ大学の使命ではないだろうか。

入学生減少という大学にとっては存亡を揺るがす大問題があるために、各大学は自分の大学の特徴として「○○大学」まちなか研究室と自分の大学をアピールしたいという気持ちは分かるが、現在、日本の大きな社会問題となっている、地方の中心商店街の衰退という大問題に「学」として対処するためには、相互の人材交流やアライアンスなどをもっと進めてこそ、真の「地域」貢献になり、志を持った学生の入学につながるのではないだろうか?