2012年4月号
イベント・レポート
JSTベンチャーミーティング 楽市楽座
資金調達先募るマッチングイベント
JST発ベンチャーが技術・事業計画発表

独立行政法人科学技術振興機構(JST)は3月21日、東京本部別館において、JSTが行っているさまざまな支援事業から得られた研究開発成果を基に設立されたベンチャー企業(JST発ベンチャー企業)が、その技術・製品・サービスとビジネスプランを発表し、資金調達先を募るビジネスマッチングイベントを開催した。戦国大名が座を解散しそれまでの座商人の特権を排し税の減免等新興商人の自由営業を推し進めることによって城下町を繁栄させるためにとった政策に、イノベーティブな新技術を持った新興ベンチャー企業の事業展開を推し進めることで低迷する経済が再び繁栄するイメージを重ね合わせ、「JSTベンチャーミーティング 楽市楽座」とネーミングした。

「産学官金連携」の体制強化

JSTは、JST発ベンチャー企業を対象に毎年調査を行っている。過去の調査結果からはこれらのベンチャー企業が、人材、販路、資金面で苦戦していることが判明している。こうした状況を背景に、大学等からベンチャー企業に技術移転された研究成果を社会に普及することを目指し、JSTは平成22年8月に株式会社産業革新機構と連携協定を締結したことを皮切りに、昨年8月には株式会社日本政策金融公庫と業務連携・協力に関する覚書を締結するなど、従来型の産学官連携活動に金融機関を加えた「産学官金連携」の体制強化に取り組んできたところである。今回、より具体的にこれらのベンチャー企業とベンチャーキャピタル(VC)をはじめとする金融機関とのマッチングを目指し「JSTベンチャーミーティング 楽市楽座」を開催したものである。

ベンチャーキャピタルに働き掛け

技術や事業計画等を発表してもらう企業の条件は、開発製品が上市しているか上市間近で、今後の事業展開のためにまとまった資金を必要としているベンチャー企業。開催に先駆けこれらの企業に参加の意向を確認し、プレゼンテーション企業を決定した。

一方、プレゼンテーション企業がアーリーステージの企業であることからVCに積極的に参加していただきたいと考え、VCに集中的にプロモーションをかけることとした。イベントの趣旨を説明の上、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会のご協力を得てその会員VC各社へ、また、独立行政法人中小企業基盤整備機構ファンド事業部のご協力を得て同事業部が出資している投資事業組合の無限責任組合員であるVCに、それぞれ開催案内とベンチャー企業各社の概要を発信した。JSTとしてもホームページや報道機関向けの情報誌にイベント案内を掲載し、提携先の金融機関等にも個別に案内した。また、当日はベンチャー企業のプレゼンテーション後、関心を持った金融機関と個別面談も行うこととした。

プレゼンテーション用の資料については、資金調達という今回のマッチングの目的を重視した内容のものとするため、各社より原案の提出を受けた後、産業革新機構および中小企業基盤整備機構の専門家による個別の指導・助言機会を設け、校正を重ねた。

●プレゼンテーション企業4社の概要

①株式会社マイクロエミッション
平成18年8月設立 資本金:2千万円
所在地:石川県能美市旭台2-13 いしかわクリエイトラボ

開発技術の概要

独自の液体電極プラズマを採用し、液体に含まれる元素の特定と濃度の測定が「いつでも、どこでも、誰でも」できる画期的な小型元素分析器を開発した。

製品・サービスの特徴

1.4kgというハンディサイズで元素分析器を実現。バッテリー駆動も可能なためオンサイトで分析できる。現在、同じ原理で、自動・連続分析が可能なインラインモニタータイプの製品を開発中。

対象市場

製造工程管理や排水検査など製造業界、レアメタルや有害成分の確認など産業廃棄物業界、飲料中のミネラル分測定や食材の安全性確認など食品業界、土壌や水質中の重金属検査など環境分野、血液検査や尿検査など医療分野など。

事業の概要

自社ブランド品として、製造業界、環境関連業界などを中心に販路開拓を行う。インフラの不十分な新興国から環境意識の高い先進国までターゲットになる。大手企業との共同開発品として、実験室向け分析機器や医療応用などハイエンド製品の開発も進んでおり、自社ブランド品との相乗効果を狙う。

②株式会社Proteomedix Frontiers
平成22年3月設立 資本金:1千万円
所在地:宮城県仙台市泉区明石南二丁目1番地の5

開発技術の概要

強いシグナルを出すペプチドをタンパク質のトリプシン消化産物から選択する手法を開発し、三連四重極型質量分析装置を用いて多種類のタンパク質の高感度同時絶対定量を実現した。

製品・サービスの特徴

薬物輸送担体、代謝酵素などの薬物動態関連タンパク質を定量するReady Made型キットを販売している。さらに、バイオマーカーや受容体、チャネル、酵素など新薬標的タンパク質について、定量法をOn Demandで受託開発する。

対象市場

新薬探索・前臨床試験・臨床試験研究領域だけでなく、疾患診断薬の領域へ応用可能である。従来法に比べ特異性と信頼性が飛躍的に高く、手術組織や血漿(けっしょう)などのマーカーを同時定量することで個別医療の新規市場が開拓できる。

事業の概要

開発技術を全世界に普及させるためグローバルなビジネス展開を基本とし、タンパク質定量技術を活用した共同研究や業務提携を通じて、新規市場の開拓を目指している。

③株式会社Transition State Technology
平成21年6月設立 資本金:550万円
所在地:山口県宇部市常盤台二丁目16番1号
山口大学工学部ビジネスインキュベーション棟206

開発技術の概要

量子化学計算をベースとしたCASS (Computer Aided Synthesis)技術。新薬や触媒設計、分子機能性の向上、合成法の改良や最適化、収率向上等が可能で、研究期間・コストの圧縮にも役立つ。新薬開発段階におけるリスク評価や信頼性評価にも適用できる。

製品・サービスの特徴

CASS技術をコアとした「研究受託システム」により開発をサポートする。反応データベースシステムの開発や、CASS技術・計算化学の導入、トレーニングを行っており、大手化学企業・製薬企業にも採用されている。

対象市場

CASS技術は、医薬品・中間体・ファインケミカル・有機電子材料等、広い範囲の化学物質の設計および合成に適用可能。創薬からCMC (合成プロセス制御)までが対象市場となる。

事業の概要

CASS技術をコアとして、特に製薬段階においてCASS技術を提供し、実績を積んできた。今後は適用範囲を創薬段階にまで広げ、新薬設計からCMCまで、一貫して適用することにより、研究期間・コストの圧縮と、開発段階におけるリスク評価と信頼性評価を実現する。

④株式会社アグリライト研究所
平成23年12月設立 資本金:300万円
所在地:山口県山口市吉田1677番地1 山口大学農学部気付

開発技術の概要

イネは、夜間に照明が当たるとコメの品質や収量が低下する「光害」が起こる。照明の波長や発光条件の制御により光害を阻止する技術(「光害阻止技術」)と、夜間照明がイネへ与える影響の評価手法も開発し、「光害診断システム」として完成させた。

製品・サービスの特徴

光害診断システムを用いて、光害予測を受託するコンサルタント業務、光が植物に与える影響についての分析受託業務を展開する。また、光害阻止技術を搭載した照明装置の製造・販売を、照明メーカーと連携して展開する。

対象市場

コンサルタント業務は行政や法律事務所等、分析受託業務は大学等研究機関や照明メーカー等に向け展開する。光害阻止技術搭載照明装置は、光害を懸念して照明設置の進まなかった農地隣接エリアの照明設置者に対して販売していく。

事業の概要

当初は、コンサルタント業務と分析受託業務を中心に展開する。光害阻止技術の適用範囲を、他の農作物やより高照度な道路照明へと拡げる。将来的には、生産性向上や特定栄養分の強化などにつながる植物工場用照明なども指向する。

さまざまなマッチングニーズに応える

写真1 ベンチャーミーティング楽市楽座 企業のプレゼンテーション

3月21日は、当日参加の方も含めて20名近くの方に参加いただいた。プレゼンテーションでは、ご出席の皆さまの熱心に聴講される姿が印象的であった(写真1)。プレゼンテーション企業と参加者との名刺交換も活発に行われ、個別面談へつながった企業もあった。

今回の「JSTベンチャーミーティング 楽市楽座」は、VCをはじめとする金融機関からの資金調達を目的として開催したが、今後は、メーカーや商社等の事業会社や研究機関等を対象に、技術提携先や業務提携先、販売先の開拓を目的にしたものなどさまざまなマッチングニーズに応える機会としても開催していく計画である。

(下田 修:独立行政法人科学技術振興機構 産学連携展開部
  事業推進(ライフ)担当)

JSTベンチャーミーティング 楽市楽座
会期: 2012年3月21日(水)
会場: JST東京本部別館2階セミナー室(東京都・千代田区)
主催: 科学技術振興機構(JST)