2012年9月号
特集 - 新産業創造
株式会社モルフォ
画像処理ソフトウエアで実現する手ブレ補正とHDR
顔写真

平賀 督基 Profile
(ひらが・まさき)

株式会社モルフォ 代表取締役社長



株式会社モルフォは2004年に、東京大学出身の技術者が設立し、東京大学エッジキャピタルから出資を受け、東京大学産学連携プラザに入居して企業活動を始めたベンチャー企業。昨年7月、東証マザーズ市場に株式上場。主力製品は、携帯電話などに使われる手ブレ補正ソフトウエアだ。

株式会社モルフォ

東京大学出身の技術者が設立したベンチャー企業で、画像処理技術の研究開発と製品化、ライセンシングを行っている。
主に携帯電話、スマートフォンを中心に技術を提供しており、主力製品である静止画手ブレ補正ソフトウエアをはじめ、約20製品の画像処理ソフトウエアが国内外の携帯電話メーカー等に幅広く採用されている。

東京大学エッジキャピタルから出資

株式会社モルフォ創業者である私は、東京大学理学部情報科学科でコンピュータグラフィックスやビジョンの研究を行い、2002年に博士課程を修了して博士号を取得した。その後、研究で培った専門知識や経験を実世界に役立てたいという思いのもと、2004年5月に私を含めて4名でモルフォを設立した。

設立後すぐ、2004年9月に東京大学エッジキャピタルから出資を受けた。同時に東京大学産学連携本部ならびに関連法人が入居している東京大学産学連携プラザに入居し、本格的な企業活動を開始。以来、ハード/ソフトの両面から支援を東京大学から受けており、そうした意味でモルフォはいわゆる“東大発ベンチャー”である。

創業後、組み込みソフトウエア開発を事業とし、静止画手ブレ補正ソフトウエアをはじめとした独自の画像処理ソフトウエアを開発した。いずれの製品も採用実績を伸ばし続け、累計ライセンス数は2011年5月に3億を超え、今もライセンス数は順調に伸びている。それに伴い会社も成長し、2011年7月に東証マザーズ市場に株式上場をすることができた。

●提供する技術の概要

①PhotoSolid

最初に製品化し、今でも主力製品の1つであるのが静止画手ブレ補正ソフトウエアの「PhotoSolid」である。

手ブレ補正の一般的な方式はメカニカル方式で、カメラに内蔵されたジャイロセンサーで動きを検出し、それに合わせてレンズやCCDを動かすことで補正を実現している。一方、PhotoSolidは処理をソフトウエアで行うために、メカニカル方式に比べて物理的にも小さくコストも下げられる点が利点である。

静止画手ブレが生じる原因は、シャッターが開いてセンサーが露光している間にカメラが動いてしまうことにある。したがってシャッター速度を上げ(=露光時間を短くし)、カメラが相対的に動く大きさを少なくすれば手ブレは防げる。一方で、センサーに入ってくる光量が少ないために画像にノイズの影響が強く現れ画質が劣化するため、複数枚の写真を撮影し、それらを足し合わせることでノイズを軽減させ画質を改善する。しかし、複数枚の写真の連写中にもカメラが動き、複数枚の写真間で微妙な位置的ズレが生じるため、写真の位置的ズレを写真そのものから自動算出し、それを補正してから足し合わせを行う。こうすることでブレも少なくノイズも少ない写真が生成できる。

また、PhotoSolidがソフトウエア式手ブレ補正の中でも優れている点は、写真の位置ズレ算出に、従来の動き検出が2自由度であるのに対して6自由度の動きを検出している点にある。

②Morpho Full HDR

上:補正なし 下:補正あり

HDR(ハイダイナミックレンジ)合成技術とは、明暗差の大きなシーンの撮影時において黒つぶれや白飛びを抑えた画像を生成する技術である。暗い室内風景と窓の外の明るい風景を同時に撮影する場合等、明暗差の大きなシーンを撮影すると暗い室内部分が黒つぶれし、明るい室外が白飛びする。このような明暗差の大きなシーンを撮影する際にHDR合成技術を使うと、露光量の異なる複数の画像を撮影し1枚に合成することで、黒つぶれや白飛びを抑え露出調整を最適化してHDR画像を生成する。

このHDR合成技術を進化させ、より人の視覚に近いHDR画像を作成することを可能にしたのがMorpho Full HDRである。露光の違う複数枚の画像を合成し、従来のHDR画像が約1,600万色で表現しているところを数十億~数十兆色で出力画像を表現できる。これは言い換えると、通常のHDR合成画像が8bitなのに対してMorpho Full HDR では16bit相当のダイナミックレンジの広い画像が作成できることになる。一方でスマートフォンやタブレットのディスプレイは8bitに対応しているので閲覧時は8 bitだが、16bit相当の画像を保存しているので1つの画像の中で自由に露光を変えることができる。例えば、風景の中に建物がある画像の場合、建物の露光に合わせた画像にしたり、建物の背景である空に合わせた露光にして楽しむことができる。

海外携帯電話メーカーへ営業活動

国内携帯電話市場における海外メーカーのシェアは、スマートフォンの急速な普及に伴い年々高くなっていることから、海外携帯電話メーカーへの営業活動にさらに注力していく。また、モルフォの組み込みソフトウエア製品はスマートフォンへの搭載が主だが、今後は搭載先のデバイスをデジタルコンパクトカメラなどに広げつつ、将来的にはクラウドへの展開も予定している。

今後も、「良い製品を生み出すためには、高い技術力をどうサービスや付加価値に結び付けていけばいいのか」を念頭に置いて製品開発を行っていきたい。

産業界とアカデミアの人材の流動性を

産業界はグローバリゼーションが進んでいるが、日本のアカデミアもこれまで以上に海外に開いていっていただきたい。高度な研究成果は国内の学会のみで発表するのではなく、研究者自らが海外に行って情報の収集と発信を行い、そうした成果を産業界にフィードバックすることで良い影響があると考える。これには産業界とアカデミアの人材の流動性をより高め、今まで以上に密に連携していくことも不可欠であると思う。