2012年9月号
特集 - 新産業創造
高知高専のマイクロバブル技術を三菱電機が事業化
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秦 隆志 Profile
(はた・たかし)

高知工業高等専門学校
物質工学科 准教授


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西内 悠祐 Profile
(にしうち・ゆうすけ)

高知工業高等専門学校
電気情報工学科 助教


全国の高等専門学校(高専)でも企業との連携が進んでいる。高専の特許を大企業へ移転した例として、三菱電機の家庭用給湯機を紹介する。

高知工業高等専門学校は、研究成果であるマイクロバブル発生機構を、三菱電機株式会社に技術移転し、同社が新しい家庭用給湯機として事業化する。平成24年末、「三菱エコキュートHPシリーズ」のプレミアムタイプとして発売予定である。

第1次産業がターゲット

国立高等専門学校機構では、昨今、地域社会に対する研究や教育の貢献が主要な業務の1つとして位置付けられており、個々の高専においてそのような取り組みが活発に行われている。本校のマイクロバブル研究グループも、特色ある地域経済への貢献として、高知県の基幹産業である農林水産業(第1次産業)分野で、マイクロバブル技術のさまざまな応用展開を進めている。

具体的には、次のような分野で、地元企業とマイクロバブルの有用性を検証し、その装置の開発を行っている。

・山桃などの形状が複雑な農産物の優しい洗浄手法(対象物を痛めない)

・水産業の養殖槽などの溶存酸素向上・保持手法

現在、マイクロバブル発生機は多数販売されているが、その使用範囲が清水に限られるなどの制約が多い。しかしながら、本研究グループが研究開発を行ってきたマイクロバブル発生機は前述のように第1次産業をターゲットとしてきたため、フィルターを用いることなく「泥水」や「海藻などが混じった海水」でも利用できる利点を持つ。さらに、コンパクト、高い耐久性、発生するバブルの約80%が1μm以下という高い性能を有している。このような優位性を有するため、本研究成果で生まれたマイクロバブル発生機は科学技術振興機構(JST)の外国特許出願支援制度を受け、PCT出願するに至っている。

きっかけはイノベーション・ジャパン

三菱電機へ技術移転するようになったきっかけは、研究成果をJSTと新エネルギー・産業技術総合開発機構主催のイノベーション・ジャパンに出展した際、同社の研究者の方々と知り合ったことである。その後、本校のマイクロバブル発生機構をベースとした同社との共同研究を実施し、これが今回の給湯機に対する実施許諾の締結につながった。

入浴の快適性を向上

本校のPCT出願をベースとして、三菱電機と共同研究により開発されたマイクロバブル発生機は、家庭用給湯機仕様のものである。現在、同社は家庭用給湯機として風呂配管内の「バブルおそうじ」機能を搭載した「三菱エコキュート」を販売中であるが、今回、共同開発したマイクロバブル発生機構(図1)は入浴における快適性の向上のために設置される。今後、「三菱エコキュートHPシリーズ」のプレミアムタイプとして、現行の「バブルおそうじ」機能に加えて「ホットあわー」*1機能として新規搭載され、平成24年12月21日から順次発売予定である。

図1 共同開発されたマイクロバブル発生機構のイメージ
     (「三菱エコキュートHPシリーズ」販売用パンフレットから抜粋)

広い応用範囲

マイクロバブルは水と空気さえあれば作製できるが、通常のバブルとは異なったユニークな性質を持つため、その応用範囲は非常に広い。その中でも、本校のマイクロバブル研究グループは、前述のように高知県の主要産業である第1次産業をターゲットにしており、現在、高知県内の複数の企業と共に、農産物洗浄や水産業における溶存酸素向上・保持について、研究および装置・システム開発を行っている。

現在の成果としては、マイクロバブルを導入した節水型の農産物洗浄機を試作開発し、現行機に比べ約40%の節水効果を得ている。また、水産業においてはマイクロバブル導入により養殖魚の貧酸素状態における魚死を削減し、生産性の向上が得られている。このようにマイクロバブルは第1次産業の活性剤として期待できる。

三菱電機への技術移転により、「社会に対する研究成果の貢献」の一翼を担うことができ、機構職員として大変嬉しく感じている。この技術は第1次産業以外の用途の可能性も大きいため、多くの分野で活かし、研究成果の社会的貢献ができるよう、さらに研究を進めていきたい。

*1
「マイクロバブル(あわ)とほんのりあたため機能(ホット)が作り出す、ぬくもり(ホット)と癒し(ホッと)に包まれるひと時(アワー)」とPRしている。