2015年6月号
特集 - シーズを発掘して実用化する
集魚用の大光量LED照明の開発
顔写真

新井 良一 Profile
(あらい・りょういち)

交和電気産業株式会社
経営推進管理室 取締役


漁業用照明は国際宇宙ステーションから見てもそれと分かるほど光量が大きい。従来の照明ではエネルギー消費が大きかったが、産学官連携による漁業用LED照明の開発によって、それがぐんと改善された。

大光量LED照明メーカーとして

交和電気産業株式会社(以下「当社」)は、次の三つの製品群を柱として事業を展開している。

①一般用LED照明(投光器、天井灯など)

②農業用LED照明

③水産用LED照明

また、次世代型の大光量LED照明の開発・設計と製造、販売も行っている。

当社の大光量LED照明は、単一光源式の大規模LEDモジュールを用いているため、大光量で光が広がり遠くまで届く。また、LEDベアチップ(LED素子)の搭載法や蛍光体の調合、照明器具の組み立てまで、自社で開発・設計し、一貫生産ラインに乗せられるため、用途や目的に応じた発光色のLED(光波長制御型LED)の生産が可能である。

産学官連携で集魚用LED照明の開発を始めたきっかけ

わが国の漁業経営環境は、原油価格高に伴う漁船の燃料費高騰、漁業従事者の高齢化、地球環境変動による漁場の変化などに起因して悪化している。

この漁業経営状態を改善する第一の対策が、灯火漁法で使う高出力ハロゲン電球の消費電力を低減し、照明用発電機台数や燃料費を削減することだった。鹿児島大学水産学部の安樂和彦准教授は、高出力ハロゲン電球の代替として低消費電力で高効率なLED照明の開発を当社に依頼した。この依頼がきっかけで、当社の技術を活用した集魚用大光量LED照明の開発を始めた。

第二の対策が、短時間で漁ができる高効率化漁業の実現だった。そこで船舶運航時間や漁業作業時間を短縮できる集魚用LED照明システムを、九州産業大学情報科学部の田中康一郎教授と共同で開発することにした。

集魚用LED照明に求められるもの

集魚用LED照明の要素技術として、魚に有効な魚比視感度補正後放射照度(魚の比視感度補正後の放射照度)の向上を目指し、LEDベアチップと蛍光体材料の探索、LEDベアチップと蛍光体との組み合わせの検討、蛍光体を添加した蛍光体樹脂層の層厚などの蛍光体層設計の検討などを行った。

次に実験用の小型サンプルを試作して評価した。LED素子への投入電力を一定として、オーシャンオプティクス社製の色測定システムを用いて放射照度を測定した。そのデータから、独立行政法人*1科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)のシーズ育成タイプで確立した標準作用効率推定ワークシートを用いて、魚比視感度補正後放射照度と作用効率を算定した。この評価結果を表1に示す。魚比視感度補正後放射照度は、2012年(平成24年)度は660(相対値)だったが、2013年(平成25年)度には10%強向上して730となり、目標をクリアした。これは青色LED素子の発光効率アップによるところが大きい。

表1 発光部光源仕様と光源特性

集魚用LED照明システムでは、LED水中灯に水濁、水深、水温センサーを搭載し、海水の濁度により自律的に照度制御する研究を行った。収集したデータはLED水中灯に取り付けたハードウエア基板で集約して船上のサーバーに転送し、漁獲データと組み合わせて統計的に分析した。得られた結果を次回の漁獲への推奨情報として提供することにより、漁業作業時間短縮と燃料費削減、漁業作業の標準化を目指した情報化漁業を研究した。

研究成果を活かして実用化した集魚用LED照明

高効率な漁獲を実現させるため、魚群行動に対する発光スペクトル特性と発光量との関係を調査・解析した。この結果を基に、魚群行動を制御可能な最適発光スペクトル特性と発光量を持ち図1、かつ発光量が制御可能な大光量集魚用LED照明を開発して製品化した(写真1、2、3)。

図1 魚の視感度特性とLED光源特性(光波長nmと相対強度)

       写真1 600W船上灯                    写真2 1kW水中灯

写真3 本集魚用LED照明(LED水中灯、LED船上灯)を漁船に搭載した様子

LED水中灯は、短時間で高効率な漁獲を可能にするために、自律式照度制御機能などを付加するとともに、集魚状態に応じたLED照明の発光量制御やスマートフォンなどによる遠隔制御ができるようにした。

試作した集魚用LED照明で操業試験を行ったところ、集魚性や漁獲量は同等で、従来の高出力電球集魚灯に比べて消費電力を約80%削減できることが分かった。具体的には、照明用燃料が12.2リットル/時から5.1リットル/時へ約58%削減(削減金額年間約87万円)、照明用発電機数が2台から1台に、発電機の回転数を830rpmから780rpmに低減できた。これらの省エネルギー効果は漁業経営の安定化と共に低炭素社会の実現にも貢献できる。また、光の広がりや発光色、操作性(小型・軽量化)など、漁業者ニーズを取り入れたLED集魚灯を開発した意義は大きい。

集魚灯の市場と今後の展望

集魚灯の国内市場規模は、水産庁の漁船統計の船数から計算した灯数から約5000億円と推定される。当社の売上予測は、年間約6億円である。

今後、漁業における全体の燃料費(灯火用+船舶移動用)を削減するために、さらなる高効率LED集魚灯や、気象データ(海面温度等)と連携させた、より強力な漁業支援ができる集魚用LED照明システムの実現が期待される。

*1
当時。2015年4月1日より国立研究開発法人。