2016年10月号
特集 - 大学発ベンチャー 産業構造変革の可能性
メビオール株式会社
土のいらないアイメック®フィルム農法
顔写真

森 有一 Profile
(もり・ゆういち)

メビオール株式会社 代表取締役社長



【大学発ベンチャー表彰2016】大学発ベンチャー表彰特別賞
ハイドロゲルの技術をもとに栽培システムとしてパッケージ化できており、広く普及が期待できる。食料問題、環境問題への寄与も大きく、今後の市場性も高い。中国、ドバイに引き続き、広く海外に展開し、大きく成長することを期待する。

メビオール株式会社(神奈川県平塚市、以下「当社」)は、医療分野で開発された膜、ハイドロゲル技術を駆使して、土が不要で、水のロスが無く、かつ高品質の作物を生産できる農業(アイメック®*1あるいはフィルム農法)の開発・普及を目的として1995年に設立された。アイメックは、土耕栽培の難しい土作りや水やり技術が不要で素人でも農業ができ、また大量の養液を循環・交換する水耕栽培と比べてコストが安く、現在150以上の農場(総面積は約10万坪)で高糖度・高栄養トマト(フルーツトマト)生産に採用されている。フルーツトマトは最も人気の高い野菜だが、生産が難しく、従来は高価でマイナーな食材であった。しかし、アイメックを採用した生産者(60%は非農業者)がフルーツトマトを安定的に生産し始め、今までになかった高収益農業ビジネスが生まれつつある。

さらにアイメックでは不毛の地でも高品質の作物が生産できる。

①大津波被災地の陸前高田市(6,000坪)でアイメックトマトが生産され、復興モデルとなっている。

②土壌汚染が危惧される中国上海近郊(16,500坪)で安全性・おいしさを担保するアイメックトマトが生産され大好評である。

③ドバイの砂漠(1,200坪)で生産したアイメックトマトは甘さ、収穫量共に日本トマトを上回った。砂漠は晴天率・光量共に優れ、アイメックによって好適な食糧生産基地に変わることが実証できた(写真1)。

写真1 ドバイ砂漠のアイメック®トマト農場

世界のトマト生産量は日本の約230倍である。日本で生まれたフルーツトマトを寿司、和牛と同様に世界に展開していきたい。

フロンティア技術とボーダーレス市場

経営とは人・物・金の三要素から事業を創り出すことだと思う。世の中には色々な製品・技術(物)があふれていると同時に、色々な市場(金)も存在している。従って、物と金の色々な組み合わせ(事業)が無限に存在している。人の役割は、無限に存在する物と金の組み合わせの中から、今までは存在しなかったが、将来は存在するべき組み合わせ(事業)を見つけ出すことだと考えている。私は東レ株式会社、テルモ株式会社、W. R. Grace(WRグレース・アンド・カンパニー)と、日米の企業を経験してきた。その間にさまざまな物と金を見てきた中で、フロンティア技術とボーダーレス市場を組み合わせることによって、新しい事業を創出するために当社を設立した。

太古から今日まで人類に食料を提供してきた農業は、人口の急増などに伴い、より高い生産効率が求められている一方で、地球温暖化による水不足・土壌劣化などにより、生産効率はむしろ低下しているともいえる。一方、人類に利便性を提供してきた工業は、今日ますます発展しているように見える。この差は、土と水しか使われていない農業に対し、工業では太古の石器から今日の半導体に至るまで、絶えず基礎素材が進歩していることに起因していると考えている。よく言われることわざ「破壊者は業界の外からやって来る」にならって、私どもは農業界で長年使われてきた土と水を、工業で進歩してきた膜と、ハイドロゲルによって置き換えるという冒険をしたところ、植物はそれに良く反応すると同時に、新しい機能をも獲得したことには、正直驚き、無限の可能性が見えてきた。

先に述べたように、フルーツトマトという食材を通じて、農業が存在しなかった不毛の地を経済的に活性化することによって、大きな社会問題になっている難民、テロなどの解決の糸口としていきたい。一方、農業の工業化技術として、LEDと水耕栽培を組み合わせた植物工場が注目を集めている。植物工場にフィルム農法を組み合わせることにより、生産物の安全性と栄養価が向上するという知見を得ている。本技術の究極的な狙いは、今後老齢化に伴って費用負担が飛躍的に増大するタンパク製剤の生産を目的とした組み換え体植物の生産と考えている。

*1
アイメック®はメビオール株式会社の登録商標。