2016年12月号
産連PLUS+
学生のアイデアを企業の技術で具現化する「具現化ソン」

愛知県、名古屋市、名古屋商工会議所などが主催するビジネスの異業種交流の展示会「メッセナゴヤ2016」が10月26日〜29日、ポートメッセなごや(名古屋港金城ふ頭)で開催された(写真1)。

40都道府県、海外からは20の国や地域から、1,400以上の企業や団体が出展するビジネスショーだが、会場には家族連れや女性だけの来場者も多く、親しみやすい。大学生のアイデアを地元企業が協力しながら具現化するという取り組みを実践する団体も出展し、話題だ。

「具現化ソン」とは、具現化+マラソンの略称で、アイデア創出で終わることなく、具現化・実証実験までを見据えて製品構想へ挑戦するオリジナルの製品構想ワークショップである。

「モノづくり」の原点は、人が共感し合える新しい価値を創出するところにあるとする“共感工学”を提唱する、名古屋大学共感工学ラボの宇治原徹教授がプロジェクトリーダーとして展開し、学生と企業や行政をつなぎながら未来の道具を製作している。

写真1 メッセナゴヤ2016会場

東海地区を中心とした学生のアイデアを形に

「モノづくり」は技術だけでは完成しない。使う人の生活や行動に着目し新たなニーズに気付くためには、心理学や社会学、アイデアを視覚化して機能化させ、デザインや工学など多様な視点で取り組むことが重要とされ、そこに技術力が加わり「モノ」が生まれるという。学生ならではの発想で、いくつかの「モノ」が生まれ、実証実験や商品化された「モノ」もある。

産学連携の「モノづくり」プラットフォームで「具現化ソン」を主導する一般社団法人未来マトリクスには、東海地区を中心とした大学、高専、専門学校15校から約80人が、アイデアを形にするために集まる。

学生のアイデアを企業や交通局が後押し

名古屋大学4年生の平松泰周氏らは、通学時の地下鉄でドア付近に人がたまり、乗り降りがしづらいと常々感じていた。そこでドア付近の混雑を解消する方法として、乗客が車内の奥に進みたくなる魅力的なものがあればいいのではと考え、スマートフォンの充電機能を持たせたつり革「TuRiPhone(つりフォン)」を考案した(写真2)。自身らで制作した「充電器付きつり革」を、名古屋市交通局の協力の下、実際の車両に設置し、同交通局の工場内の留置線で車両を走行させ、乗客役の学生や協力企業が体験し、効果や影響を検証した。結果、現段階では商品化には至っていないが、アイデアはさらに進化しそうである。

写真2 「TuRiPhone」を考案した平松泰周氏(名古屋大学)と中川誠氏(愛知工業大学)

他のチームでは、「食事場所を決めるとき、複数人ではなかなか決められない」という経験から、店選びを助けてくれる「ソムリエさん」を考案(写真3)。看板上部のカメラが人間の特徴を捉え、店の候補を絞り込み、その人に合った店を提案するもの。これだけの仕組みは学生だけで制作するのは難しく、企業に対しプレゼンテーションを行い、本体の制作は株式会社FIRST、ソフトウェアは東京システムズ株式会社、システム設計を株式会社アービス、クラウドソ-シングをJBCC株式会社、地図情報は表示灯株式会社とトー・ナビタ株式会社から提供を受けた。それぞれの得意とする領域で複数の企業が協力を買って出るというのも、「具現化ソン」に対する理解の深さがうかがえる。

写真3 「ソムリエさん」(左)

企業の協力で具現化した実験機は、利用者に体験してもらい効果を検証し、学生の柔軟な発想力と情報力を活用するなど、同交通局と連携し、地下鉄の新たな魅力を作り出すことで、新しい町づくりにもつながっている。

そのほか世代を超えたコミュニケーションのためのアイデアとして、猫を飼いたくても飼えない若者と、猫を飼っているものの自分以外に猫の世話をしてくれる人がいなくて困っている高齢者に目を付け、マッチングさせる「猫守(ねこもり)」や、一人暮らしの学生と、若者と交流したい高齢者のコミュニケーションをはかる「Meet up Smile」など多くのアイデアが生まれ、学生を通し、大学と企業が行政と関わり、地域の活性化に貢献中だ。

(取材・構成:本誌編集長 山口泰博)