2017年2月号
特集 - ICTで医療を拓くスマートメディカル
ドクターヘリ運航のeラーニングシステム
顔写真

海野 浩之 Profile
(うんの・ひろゆき)

株式会社コア 中部カンパニー ビジネスソリューション部 部長


株式会社コア(本社東京都世田谷区、以下「当社」)は、1969年創業の独立系組み込みソフトウエアなどのシステム開発を手掛ける東証一部上場企業である。

九州から北海道まで、全国に事業所を有し事業展開する当社の中でも、中部カンパニー(愛知県名古屋市)は、長年携わってきた車載・金融分野のソフトウエア開発やシステム構築技術を、医療分野にも生かしたいと考えていた。そこで名古屋商工会議所が主幹するメディカル・デバイス産業振興協議会に加盟し、情報収集・情報交換を進めてきた。そんな中、医療機関のニーズ発表会で医療現場の生の声を聞くことができたことで、当社も複数の提案を行ってきた。

2015年3月に開催された愛知医科大学病院のニーズ発表会では、同院の高度救命救急センター救急外来の坂田久美子看護師長(当時)が「ドクターヘリ運航の学習・シミュレーションソフトウエア」というテーマで発表した。ドクターヘリ運航に関わる人員(医師、看護師、パイロット、整備士等)の学習システムに対する要望である。

このニーズに、当社が得意とするSharePoint(シェアポイント)*1をベースにしたシステムを提案したところ、採択に至り、2015年3月に運用を開始した。

気軽にできないドクターヘリ運行実習

ドクターヘリ運行における従来の学習方法は座学や人形を用いたシミュレーションが中心で、人員や場所・物品などを準備する必要があり、手軽に実施できる内容ではなかった。一般的に、実習することで医療の質は向上していくものなのだが、単なる医療情報だけでなく、着陸場所や天候といったヘリコプター独特の必要条件も伴う。また、ヘリコプターに搭乗できる人員は限られており、実際に同乗者全員が同じ体験をすることはできない。

そこで、ヘリコプターの動きを視覚的にイメージするツールを用い、実際の活動を共有、シミュレーションしながら疑似体験する、あるいはeラーニングするシステムを、という要望を受けた。

現場のニーズに応える三つの学習システム

ニーズ発表を受け、本システムの入り口に当たるポータルサイト、映像を収集するシステム、そしてeラーニングシステムの三つで構成されたシステムを提案した(図1)。

図1 システムの概要


①ポータルサイト

システムの入り口として、ドクターヘリに関わる関係者向けの情報共有ポータルサイトを構築した。スケジュール、施設予約、トピックス、掲示板などの一般的な機能を持ちながら、動画収集サーバーとしての機能、eラーニングシステムへの導入口の役割を持たせ、利便性を向上させた。

②映像素材収集システム

映像素材の収集には、スマートフォン(スマホ)のカメラ機能を利用した動画収集システムを導入した。医師あるいは看護師の胸ポケットに装着したスマホへ、救急外来センターからリモート操作で録画指示を出し、サーバーへ動画を自動転送するシステムである。スマホ紛失のリスクを考慮し、スマホ内には一切動画が残らない仕様とした。通信路もVPN(仮想プライベートネットワーク)の閉域網を利用し、セキュア(安全)な通信インフラを確保した。

医師と看護師、おのおのがスマホで撮影した動画を複数視点で記録すれば、よりリアルな現場状況を記録できるようになる(写真1)。またセンター側でも処置内容をリアルタイムに把握することができ、その後の対応を迅速に行えるメリットもある。

写真1 動画キャプチャー


③eラーニングシステム

すでに愛知医科大学病院に導入されているオープンソースのeラーニングシステム「moodle(ムードル)」と連係し、ポータルサイト内に収集された動画を利用して、より臨場感のある問題集を構築できるようにした。シミュレーション形式の分岐問題や選択方式など、さまざまな形式で問題作成ができる。またユーザーごとの進捗(しんちょく)や回答率なども算出でき、学習の習熟度も把握できる。

今後も現場の要望を取り入れながら、より使いやすいシステムにするとともに、ドクターヘリ運行に必要な教育コンテンツ拡充も加え、高レベルな教育システムへ成長させていきたい。

*1
マイクロソフトが提供している、ウェブベースの文書・情報共有アプリケーションソフト。