2017年5月号
特集 - 進化する情報メディア教育
学習意欲を持続させる思考支援ツール
顔写真

北畠 謙太郎 Profile
(きたばたけ・けんたろう)

株式会社メディアファイブ 代表取締役



楽しく学べる教育教材を作りたい

株式会社メディアファイブは、創業26年目の教育ソフトメーカーである。

筆者は、ゲーム会社で働いた後、シンクタンクで新規事業のコンサルタントに転身した経歴を持つ。当時のクライアントである教材会社の誘いを受け、メディアファイブ(以下「当社」)を立ち上げた。

シンクタンクでは、会社を挙げてナレッジマネジメントの研究を行っており、KJ法*1をはじめ、ベンチマーキング*2など、さまざまな思考法を学んできた。そこで、これまで学んだものを盛り込み、ゲームの要素も取り入れた楽しく学べる教育教材を作りたいと考えた。独立後も教育ソフトメーカーとして試行錯誤し、家電量販店、書店を中心にパソコンソフトとしての販売実績を積み、そのかいあって、当社のソフトやシステムが2,000校以上の小学校、中学校、高校、大学などに導入されている。

そんな中、当社の顧問である埼玉大学の山本利一教授の指導により、学習過程を可視化できるツールの開発を検討できないかと協議し、2013年より本格的に思考支援ツールの開発に着手、幾度となく修正を重ねてきた。

従来の教育現場では、まず教師が生徒に問題定義し、生徒は自分で考えた後、グループ討議し発表する。最後に教師がその生徒の導いた解答や結論を評価・解説する。その後、生徒はドリルや授業で学習、さらに中間・期末テストで復習し、教師はそれぞれの生徒の理解度を確認する(図1)。

図1

しかしこの場合、教師が檀上で一方的に問題定義し、積極的に参加しようとする生徒だけが手を挙げて発言する授業となる。その結果、授業の遅滞者は学年を追うごとに増加し、中学の卒業時には全国平均で約3割の遅滞者を出すといわれる。授業ごとに、生徒にレジュメや用紙を配布し、教師一人でチェックするのは大きな負担となる。そこで、授業の問題定義を図で示し、全員が答えを考え、手持ちのタブレット端末上の思考支援ツールでその解答を導くことにより、アクティブラーニングを実現することができる。

「月と太陽の違いを考える」

具体例として、中学3年理科の「月と太陽の違い」を考えさせる授業で確認してみたい。

①生徒に、「月と太陽の違いについて考えてごらん」と問い掛けると、生徒はさまざまな月と太陽の違いについて、タブレット端末上の思考支援ツールを使い考える。他の生徒の状況も映し出されるので、比較しながらより深く考えることができる(図2)。

図2

②グループに分かれて、月と太陽の違いを話し合わせる。そして代表を選び、発表させる。最後に教師が評価を行い、授業のまとめとする。

③生徒は学習したeラーニングを思考支援シートに貼り付ける(図3)。

図3

まずは重要用語を学習し(図4)、問題集に進む(図5)。このeラーニングはマルチプラットフォームであり、スマートフォンにも対応しているので、家庭での復習も可能である。

図4

図5

このように、単に思考支援ツールを活用してアクティブラーニングするだけでなく、関連した重要語学習やドリル学習により、従来の中間・期末テストや受験のための学習に連動して活用できる。従って、教師にとっても授業で活用しやすく、しかも既存のカリキュラムにもスムーズに導入しやすい学習システムである。

学習過程の可視化で思考を整理

写真1

昨年、神奈川県のある大学では、思考支援ツールを活用した就職活動支援授業を行った(写真1)。まだ社会人経験のない学生に、自分はどういう仕事に向いているか、社会に役立つ自分のスキルは何かを思考支援ツールにまとめさせ、ロジカルシンキングの方法を教育し、説得力のある面接ができるよう訓練する授業である(図6)。

当社のこのツールは高校を中心に導入され始めている。前出の山本教授は、この思考支援ツールを教員研修、大学生、中学生を対象に実践し、その効果を検証している。本稿では、教育学部の大学生に対する授業の状況をまとめた論文から、その概要を紹介する**1

図6

90分の講義で約100人の学生に対して、タブレット端末、スマートフォンを使用し思考支援ツールを活用した結果、大学生の学習過程には大きく三つの知識習得過程があることが確認された。また、思考支援ツールを用いることで大学生の学習意欲が持続したなどの成果が示されている。

学習過程を可視化し思考を整理することは、大学生だけでなく、高校生、中学生であっても大切であり、また高専や専修など他の学校種でも利用可能であるとまとめられている。

新学習指導要領では、主体的で深い学びが求められている。当社のシステムは、それらを支援する大きなアイテムとなり得ると考えている。生徒の思考を可視化する、つまり、教師は生徒たちの理解程度をつかむことができ、それらは形成的評価として授業改善、客観的な評価を実現することが期待される。

当社は資格取得のためのeラーニング教材が豊富で、高校・大学の就職支援を中心に導入が進んでいる。現在は高校や大学が中心だが、今後は、小・中学校での実践事例を多数集め、スムーズな導入に努めていきたい。

●参考文献

**1
山本利一.思考支援ツールを活用した学習履歴の分析・評価,2015.

*1
データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめていく。共同での作業にもよく用いられ、「創造性開発」(または創造的問題解決)に効果があるとされる。

*2
国や企業などが製品、サービス、プロセス、慣行を継続的に測定し、優れた競合他社やその他の優良企業のパフォーマンスと比較・分析する活動。